前回の記事からの続きです。
失敗したときに落ち込むのは自然な感情ですが、そのままではつらいだけです。
今回は「正しい思考」を使って立て直す方法を学んでいきます。
自尊心があるから失敗したとき落ち込む
まず自尊心や自信、プライドというのは、自分の承認欲からくる判断にすぎないと理解しましょう。
その判断に対して「失敗」という現実がぶつかることで、「ダメージを受けた」「立ち直れない」という反応が生まれます。
事実を確認できたところで、これからどうするかの選択肢があり、ひとつは承認欲にしがみついて自尊心(という妄想)を守り抜こうとする選択。
現実から逃げたり、他人のせいにしたりする防御反応がそうです。
もうひとつの選択が「正しい思考」、つまり方向性を確認して今からできる方法を実行に移すことです。
「できる自分」でいたいなら、できることをやってみせるしかないということ。
強い心があれば、正しく考え、なすべき作業に専念できます。
相手に向けている判断に気づく
ただし人間を相手にする場合では、どうしても正しい思考に立つことなんてできないと思うかもしれません。
たしかに関係は悩ましいものの「向き合い方の基本」が見えていれば、意外と簡単に出口が見つかるはずです。
まず、自分が相手に向けている「判断」に気づいてください。相手に対し、どんな決めつけや思い込みがあるでしょうか。
人は誰かに対して「こうであるべきだ。それ以外は認めない」といった判断を当たり前のようにやっていて、結果として多くの問題が起きます。
どちらか一方的に判断している場合もあるけれど、お互い同士で判断を向けあっていることも。
判断する側も、される側もストレスがたまり、人間関係が詰んでいくのです。
こんな状態を打破するのも、やはり「理解する」ことに尽きます。
日常での判断をあえて言葉に出す
相手の問題ばかりが目につくかもしれませんが、まずは自分がそう判断していることに気づいてください。
気づいたならば、自分の「こうであるべき」という思い込みをいったん解除できます。
自分が判断していることを自覚できていないのが問題ですが、自覚する練習としてのラベリングがあります。
日常生活でしていること、たとえば買い物などのときに「これを買うと判断します」とあえて言葉にしてみる。
この練習を繰り返していれば、大事な局面で「これは判断にすぎない」と自覚でき、心が柔軟になるのです。
人は判断されたくない
判断する代わりとして「相手を理解する」ことに努めましょう。
たとえば相手がしていることを事実として理解したり、相手の言うことをそのまま聞いたり。
「相手は判断されることなど望んでいない。ただ理解されたいのだ」ということです。
にもかかわらず、他人を判断するのが当たり前だと思っている人が多すぎます。それがいかに一方的かつ暴力的なのかに気づいていません。
自分は理解されたいくせに、相手を理解しようとせず判断ばかりしたがる。よってわかりあえない関係に行き着くのも自然なことです。
上から目線は最悪の判断
特に「上から目線」というのは最悪の判断です。上からの判断を押しつけてくる相手に、人は心を開きません。
著者の草薙さんに夫婦関係で相談してきた男性は「自分が上で、妻が下」という判断を無意識にしていました。彼の言葉から伝わってきたわけです。
その男性は仕事のできる人のようでしたが、せっかく人に貢献できる能力があるのに、それを慢を満たすことに使うのはもったいない。
草薙さんに言われたことでその男性は少しずつ自分のプライドや優越感を自覚するようになりました。
奥さんの話も「相談に乗る」のではなく「ただ聞く」ようにすることで、以前よりずっと関係が良くなったそうです。
このことからも、誰かを前にしたら「まずは数秒、理解する」という心がけに立つことが大切なのです。
理解して励ますという方法
親や上司、先生といった「相手に働きかける立場」の人は、「理解して励ます」という向き合い方がうまくいきます。
人との関わりにおいてはまず相手を理解することが第一で、その上で方向性を確かめ、方法を考えるという順番になります。
この思考で相手とも向き合います。「この人にとって最善の方向性はなんだろう?」と考えることで、適切な方法も見えてきます。
「どうしたいですか?」「僕にできることは?」といった、相手に敬意と思いやりをもった言葉が自然に出てくるのです。
これは「~しなさい」とか「こうあるべきだ」といった判断の押しつけとは正反対のもの。
判断の押しつけを解除すれば、互いにストレスが生まれなくなります。
【記事11に続く】
草薙龍瞬著『こころを洗う技術 思考がクリアになれば人生は思いのまま』
コメント