古賀史健著『文章講義』要約#09 マトリョーシカ構造で論理を固める

読書

20歳の自分に受けさせたい文章講義

前回の記事からの続きです。

今回は、文章の論理の固め方が主なテーマとなります。

ロシアの民芸品、マトリョーシカ人形の構造が、文章を組み立てる上での参考になります。

つまり、「主張・理由・事実」の3層構造によって、読者に自分の思いを伝えるわけです。

これから順番に詳しく説明していきます。

文章には主張(言いたいこと・メッセージ)が必要

文章を読むとき、読者が必ず考えているのが「この人はなにが言いたいのだろう」ということです。

書き手の言いたいこと、つまりメッセージ性のない文章は、読んでいても面白くありません。

しかし、説明がダラダラと書かれた文章でも、最後に書き手のメッセージの一文があれば、とたんに締まりがよくなるのです。

「主張」が明確になることで、文章全体が読みやすくなります。

とはいえ自分の主張を前面に出しすぎると、「俺が俺が」感が強くなって「読者の反発をまねくのでは?」と心配になる人もいるかもしれません。

なので材料だけ提供して、あとは読者の判断にゆだねるような文書のほうが無難なのではないではないか、と思うかもしれません。

でもそれは間違いです。

読者を動かすために書いている

そもそも書き手はなぜ、文章という手段を使い、時間と労力を費やしながら書いているのか。

理由は「読者を動かすため」です。

自分が有益だと思った情報を伝えることで、他者の心を動かし、考えや行動までを動かそうとするのです。

(僕も、読む価値のある本を、短時間でそのエッセンスを伝え、読者に興味を持ってもらいたいと思いながら書いています)

つまり書くことは、他者を動かすための「力の行使」となります。

だから、それ相応の反発を伴うことは覚悟の上で書かなければなりません。

主張に説得力を与える「理由・事実」

立派な主張をした後に、必要になってくるのは中身です。

主張を理にかなったものとするためには、第二のマトリョーシカ「理由」と、第三のマトリョーシカ「事実」が必要になります。

理由も事実も抜け落ちていると、せっかくの主張にも説得力がありません。

著者の例文を参考にすると、

「大相撲の人気を回復させるため、ナイター制の導入を提案する(主張)。なぜなら、平日の昼間から会場に足を運べるファンはかぎられるからだ(理由)。事実、プロ野球も平日はナイター制をとっている(事実)」

この文は「理由」が「主張」を支え、「事実」が「理由」を補強するというマトリョーシカ構造になっています。

主張・理由・事実をうまく連動させる

文章には「主張・理由・事実」の3つが入っていることが肝心です。

事実の抜け落ちた、主張と理由だけの文章だと、詰めが甘い感じになります。

なお、必ずしも「主張→理由→事実」の順番で構成する必要はありません。

事実をまず述べてから、主張とその理由を書くような構成でも問題ありません。

この3つがしっかりと連動しているかどうか、意識することが大切なのです。

ちなみに肝心の「主張」を入れ忘れると、読んでいて「で?」と思う文章になるので気をつけましょう。

 「面倒くさい細部」によってリアリティを獲得

事実としての細部を描く大切さを伝えるため、著者古賀氏のエピソードを紹介します。

小学生のころ、漫画家になりたかった彼は、SFロボット大戦ものを描こうとしてみたけれど、主人公やロボット以外の部分を描くのがとても面倒なことに気づきます。

だから、衣装や背景などにあまりこだわりたくないので、プロレス漫画を描くことにしました。

結局、有名なレスラー同士の戦いを頭の中で妄想するだけで満足してしまい、絵を描くことすら億劫になってしまったのです。

という著者の自虐ネタですが、このときの経験は現在の自分を形づくる大きなベースとなっている、といいます。

文章は「面倒くさい細部」の描写によってリアリティを獲得し、読者の理解をうながし、説得力を強化するのです。

(できるだけ細部を削って要約記事を書いている僕にとっては、少々耳の痛い話ではありますが)

記事10に続く

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