グーグルのマインドフルネス本『サーチ・インサイド・ユアセルフ』以下、SIY。
前回の記事からの続きです。
思いやりは、これまで測定されたなかでも最高水準の幸せの状態です。
さらに、リーダーシップを効果的に発揮するためには、思いやりが必要不可欠となります。
最も幸せな心の状態
マチウ・リカール氏やミンゲール・リンポチェ氏など、チベット仏教の瞑想の達人たちは「世界一幸せな人」と呼ばれています。
彼らの脳の、幸せの測定値が極端に高いからです。
そして彼らは測定中、思いやりについて瞑想していたことがわかりました。
思いやりは不愉快な心の状態だと考える人も多いのですが、実際は最も幸せな状態なのです。
では2番目に幸せな状態は何か?
著者のメン氏が試しにマチウ氏に聞いてみたところ「開かれた意識」との回答でした。
心が極端に開放的で、穏やかで、明瞭な状態のことです。
思いやりに基づく行為は楽しい
つまり、世俗から離れて瞑想し、心が穏やかになったとしても、それは2番目に幸せな状態だということ。
思いやりをもって1番幸せな状態に達するためには、生身の人間との実生活にかかわらなければならないのです。
なので、まず思いやりに基づく行為は楽しいものだというふうに認識を変えましょう。
それだけで、自分から他人へと、世界中に思いやりが広がっていくはずです。
また、ビジネスの視点からも、思いやりは現実的な利益をもたらします。
思いやりの要素
ダライ・ラマの言葉の英訳を担当するチベットの学者、ジンパ氏は「思いやり」を以下のように定義します。
「他者の苦しみに対する気遣いの感覚と、その苦しみが取り除かれるようにしたいという強い願望とを伴う心の状態」
具体的には「私はあなたを理解している」「私はあなたに同情する」「私はあなたの役に立ちたい」という3つの要素からなるといいます。
また、思いやりの実践は「私」から「私たち」への移行ともいえます。
大きな野心と謙虚な態度
メン氏が「ビジネス書を一冊だけ読むとしたらこれがいいよ」と勧めているのが『ビジョナリー・カンパニー2』です。
膨大なデータをもとに、卓越した企業がそうなった要因を調べたという本。
この本によると、卓越した企業に育つには特殊な種類のリーダーが必要とされるとのこと。
そのリーダーは「大きな野心」と「謙虚な態度」という、一見相反する性質を両方もっています。
個人の利益を超えたものに野心の焦点が定まっているので、自分のエゴをふくらませる必要がないのです。
思いやりという観点では「相手の理解」と「相手との共感」が、謙虚さの土台になっていると見て取れます。
視覚化で善良さを鍛える
何かについて考えれば考えるほど、その思考につながる神経の経路が強化されます。
これを前提として思いやりの心も鍛えることができます。
人間の脳は視覚的な知覚を処理するためにかなりのリソースを使うので、練習にも「視覚化」がとても有効です。
息を吸い込むときは、自分自身の善良さを吸い込んでいるところを視覚化しましょう。
そして心の中で、その善良さを10倍にするところを思い描きます。
今度は吐き出すときに、その善良さを他の人々に与えるところを視覚化しましょう。
善良さを自分から世界へ
「善良さ」というのは、自分の中の愛情や思いやり、利他主義、内なる喜びといったものです。
白い光としてイメージするといいかもしれません。
次に、自分をとりまく人々の中の善良さに心を向けましょう。
最後に、世界中のあらゆる人の中にある善良さに心を向けます。
息を吸い込むときは、彼らの善良さをすべて心の中に吸い込みましょう。
練習を終えるときは、1分ほど呼吸に集中してリラックスしてください。
自分を信頼できるようになる
この練習をすると、まず自分と他人の中に善良さを見ることができます。
誰かとの関係が難しいものになったとしても、その人を理解したいと望むようになります。
そして、いつも他人の役に立つことを願う人間になっていくはず。
自分の心が善良さを10倍にできるという考えがしっくりくるようになれば、自分自身に対する信頼も増していきます。
脳が「自分は人のためになれる」という考えを受け入れるようになるのです。
【記事24に続く】
チャディー・メン・タン著『サーチ・インサイド・ユアセルフ』
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