グーグルのマインドフルネス本『サーチ・インサイド・ユアセルフ』以下、SIY。
前回の記事からの続きです。
「内発的モチベーション」は自分の中に見つかる真の動機です。
それには「自律・熟達・目標」という3つの要素があります。
「自律」は、自分の人生を自分で導きたいといという衝動。
「熟達」は、大切なことをもっと上手にできるようになりたいという欲望。
「目標」は、自分のすることを、自分自身よりも大きいもののためにしたいという思いです。
ロウソク問題と報酬
おもしろい例として「ロウソク問題」にまつわる話があります。
ロウソク問題とは、画鋲やマッチなど限られた道具を使ってロウソクを壁に取り付ける方法を見つけるというもの。
画鋲の入った箱も利用すればいいのですが、そのことに気づくには、ひらめきが必要になります。
実験として、解けたらお金が支払われると告げられたグループと、何も告げられないグループに分けてこの問題を与えました。
すると意外なことに、金銭的報酬の動機を与えられたグループのほうが、成績が悪かったのです。
創造的なひらめきを求められることに対しては、お金という外的なモチベーションは逆効果になることがわかりました。
金銭的な報酬が効果を示すケース
この話には続きがあります。
今度は「ロウソク問題」を、箱も利用すればいいとわかるように、つまりひらめきを不要にして、同じように実験しました。
その結果、金銭的な動機を与えられたグループの方が好成績だったということです。
つまり、創造性をあまり必要としない、手順の決まった規則に基づく仕事に対しては、外的な報酬が効果を示すことがわかりました。
創造性などの認知的技能を必要とする種類の仕事には、はじめのほうで触れた内発的なモチベーションが有効になります。
マインドフルネスと整合性
自分自身を深いレベルで知ると、整合性がとれてきます。
自分の核となる価値観がわかり、自分にとって意味を与えてくれるかがわかってきます。
マインドフルネスの練習をしていれば、やがて整合性を見つける水準の自己認識を生み出すはずです。
つまりはマインドフルネスだけで十分だということ。
さらに良い知らせとして、自分の価値観や崇高な目標をはっきりさせるための方法は他にもあります。
目標をはっきりさせるために書き出す
目標といった抽象的な考えを言葉にするには、書いたり人に話したりするエクササイズが役に立ちます。
「自分の核となる価値観はどういうものか?」
「自分はどういう人間なのか?」
これらをテーマにして紙に書き出したり、機会があれば誰かと話しあいましょう。
聴き手にまわった際は、その人の話に割り込んだりしてはいけません。
想像は実現のための予習になる
マイケル・ジョーダンいわく「物事は、自分ができるようになる前に、自分にはできると期待しなければならない」
想像力が大切だといわれるのは、何かを達成している自分を思い描ければ、それを達成するのがやさしくなるからです。
メン氏の知り合いの女性ロズ・サヴェージ氏は、一人でボートに乗り太平洋を横断するという偉業を成しました。
彼女はもともと冒険家だったわけではなく、経営コンサルタントとして生活していました。
あるとき「自分の死亡記事を書く」というエクササイズをしていて、理想の死に方を書いていたらどんどんエネルギーが湧いてきたそうです。
そして家も結婚生活もすべて手放し、夢を追うことにしたわけです。
理想の未来を想像して書く
SIYでは、理想の未来がすでに実現したかのように想像して書く、という練習をします。
頭の中で未来を想像し、発見し、強化するのです。
書くのに費やす時間は7分くらいで、やってみると大きな満足感が得られるはずです。
楽観的に、5年後の自分の人生が理想的なものになっていると想像しましょう。
5年後がしっくりこないなら、10年後や20年後でも大丈夫です。
1分ほど頭の中で想像してから書き始めてください。
不可能から可能、そして実行へ
理想の未来を思い描けているのであれば、それをほかの人にたくさん語ることをおすすめします。
語れば語るほどに、その未来が自分にとって現実味を帯びてくるからです。
メン氏の場合、古代の賢者たちの慣行すなわち瞑想を広め、世界が平和になるところを想像しているそうです。
最初はそれを実現不可能だと思っていたのが、人に語るうちに実現可能なものへと変わっていきました。
さらに実現可能なものから「実行可能」なものに変わっていきました。
「実現のために、自分には現にできることがある」と、メン氏は心の中で感じるようになったわけです。
利他的な志を立てる
そして、自分の理想を語ることで、手を貸してくれる人が見つかる可能性も高まります。
ただし、その志が利他的であることがポイントです。
たとえばあなたが高級車に乗りたいと言っても知らん顔されますが、落ち込んでいる人を元気にしたいという目標を語れば、協力したいと言ってもらえる可能性が上がるわけです。
メン氏は世界平和について語ったところ、それほど頭がおかしいとは思われず(笑)、ダライ・ラマをはじめとする著名人たちに共鳴してもらえたとのこと。
他人のためになりたいという志や、慈善の行為はすべて、他人を奮い立たせるのです。
【記事19に続く】
チャディー・メン・タン著『サーチ・インサイド・ユアセルフ』
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