グーグルのマインドフルネス本『サーチ・インサイド・ユアセルフ』以下、SIY。
前回の記事からの続きです。
SIYが効果を発揮するために、禅寺かどこかにこもる必要はありません。
受講者たちはみんな実社会で暮らす一般人であり、7週間のあいだに計20時間を教室で過ごしただけで人生が変わったのです。
SIYは「注意力のトレーニング」「自己認識と自制」「役に立つ心の習慣の創出」という3つのステップから成ります。
選りすぐりの科学データと人材で創ったカリキュラム
EQを鍛えるためには、まず注意力のトレーニングから始めなければなりません。
トレーニングによって、穏やかでかつ明瞭な心が生まれ、それがEQの土台になります。
注意力が鍛えられると、自分の思考の流れや情動のプロセスを客観的に観察できるようになります。
すると最終的に、自制を可能にする種類の自己認識が生み出されることに。
そして、たとえば誰に会っても反射的に「この人が幸せでありますように」と思う習慣がついていたらどうでしょうか。
誰もがその人の誠実さを無意識のうちに気づくはずです。
著者のメン氏はこれらに関する科学的データおよび一流の人材を集め、とっておきのカリキュラムを創り上げました。
SIYによって根本から人生が変わるので、これを見逃したら後悔するよ、と彼は語ります。
この本が貴重な拠り所となり、あなたの旅が楽しく実り多いものとなりますように。
EQは練習で身につけていくもの
正しいトレーニングを受ければ、誰でもEQを伸ばせます。
「私のような内気で理性的なエンジニアでもうまくいくなら、あなたにもうまくいくはずだ」とメン氏。
そもそもEQというものを、本書では以下のように定義します。
「自分自身と他人の気持ちや情動をモニターし、見分け、その情報を使って自分の思考や行動を導く能力」
このEQを社会に浸透させたのはメン氏の友人兼アドバイザーであるダニエル・ゴールマン氏。
彼の著書『EQ こころの知能指数』の中でも重要なのは、情動的な能力は才能ではなく、学んで身につける能力だというメッセージです。
クリスマス・キャロルでEQを学ぶ
ゴールマン氏はEQを5つの領域に分類します。
「自己認識」「自己統制」「モチベーション」「共感」「社会的技能」の5つです。
このうちの最初の3つは個人の内省的知能、残る2つは対人的知能とみなせます。
メン氏にとってEQが学んで身につける能力だということを納得させたのは『クリスマス・キャロル』に出てくるスクルージの物語。
スクルージはお金はあるけれどEQの低い人物として描かれます。
そこから彼は精霊たちの助けも借りて、高い自己認識を育み、共感能力や社会的な技能が身についていくのです。
EQを育ててあらゆる職務の遂行能力を高める
職場という枠組みの中では、EQを伸ばすことで3つの大切な技能を発揮できます。
それは「職務遂行能力」「リーダーシップ」「幸せのお膳立てをする能力」。
ポジティブ心理学の父、マーティン・セリグマン氏の研究によると、楽観的な保険屋さんさんは悲観的な保険屋よりも売上が多かったとのこと。
(ちなみにメン氏も、ベストセラー本を書けると楽観しながら書いたらしい)
意外なことに、これはセールスなどの分野だけでなく、エンジニアなどにも当てはまるということです。
テクノロジーの分野でも、有能な人というのは「影響を与える能力」「自信」など、情動的な能力に優れていることがわかりました。
幸せの基本設定値を上げる
EQが高いと良いリーダーになれます。
このことは軍隊でも当てはまり、アメリカ海軍の有能な指揮官たちは基本的に善良で、いっしょにいるのが楽しい人ばかりだとのこと。
そしてEQは、自分自身の幸せを持続させるための技能をもたらします。
幸せとは「最適の存在状態」であり、それは「心がどう機能するかを鋭敏に理解することで到達する深遠な情動のバランス」です。
この幸せはトレーニングで身につけることのできる技能ということ。
メン氏は現在、何も悪いことが起こらなければ、基本設定で幸せでいられるらしいです。
この設定値というのは固定されてはおらず、意識的に変えることができます。
「すべての人の個人的な幸せを実現するためのお膳立てをする」ということに、メン氏はいちばん関心を寄せているわけです。
【記事04に続く】
チャディー・メン・タン著『サーチ・インサイド・ユアセルフ』
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