『サーチ・インサイド・ユアセルフ』要約#25 彼らを愛せ、彼らを理解せよ

瞑想

グーグルのマインドフルネス本『サーチ・インサイド・ユアセルフ』以下、SIY。

前回の記事からの続きです。

今回はまず、ポール・エクマン博士という心理学者の、善良さによって人生が変わった体験談を紹介します。

また、マインドフルネスを会話やメールなどに役立てる方法にも触れていきます。

10分間の会話で経験したこと

ポール氏はアメリカ心理学協会の、20世紀を代表する心理学者100人に選ばれたほどの人物。

しかし彼は少年時代のつらい経験のせいで、大人になっても週二のペースで怒りを爆発させては後悔していたそうです。

あるとき彼は、インドにて仏教僧たちへの講演を頼まれたものの、僧侶などおかしな連中だと思っていたので乗り気ではありませんでした。

それでも娘に説得されて出向いたところ、ダライ・ラマと対面で話す機会に恵まれました。

会話は10分間でしたが、そのときポール氏は自分の全存在の中に「善良さ」が満ちあふれる経験をしたといいます。

善良さは人生を劇的に変える

ポール氏はその経験をして以来、人々が情動的なバランスを改善するための科学研究などを続けています。

「善良さ」はとても強力なので、10分経験するだけでひとりの人間の人生を変えるのです。

ポール氏のこのエピソードは、ダライ・ラマ氏が何かをしたというよりも、ポール氏自身がその場にもたらしたものかもしれません。

どちらにしても、善良さほど人に影響を与えるものはないということ。

ちなみに、著作のメン氏が「善良さ」という言葉を気兼ねなく使えるのはポール氏のおかげらしいです。

やっかいな会話対策に必要な洞察

やっかいな会話に巻き込まれたりする原因として、洞察力の不足が挙げられます。

具体的には、話す人のアイデンティティや、会話の意図と実際の影響との食い違いなどに対する洞察です。

やっかいな会話をうまくこなすために、まずはどんな会話も3種類に分けられるということを知りましょう。

それは内容に関する会話、気持ちに関する会話、アイデンティティに関する会話の3つです。

アイデンティティに関する会話とは、「この会話から自分について何がわかるか」ということ。

「私は有能か」「私は善良な人間か」「私は愛される価値があるか」といったことのどれかがかかわっているはずです。

第三者の話から始めるのも有効

会話するうえで大切な次のポイントは「そもそもこの話題を切り出すかどうか決める」ことです。

建設的な意図がないのならば、話題を切り出さないほうが良いこともあります。

やっかいな会話をせざるを得ないなら、できる限り「第三者の話」から始めるのが得策です。

第三者の話は客観的で、相手との共通の基盤を築きやすいからです。

相手の話を聞く際は十分に耳を傾け、自分と相手とで同じ状況の解釈がどう違っているかを吟味してください。

意図と影響を分けて考える

この本で紹介してきたことを練習しているならば、やっかいな会話をこなすために必要な技能がだいたい身についているはず。

加えて重要となる洞察のひとつが「影響と意図は違う」ということ。

自分が意図したことではなく、相手に伝わる影響で評価されてしまうわけです。

もうひとつ、会話にはアイデンティティの問題が深く絡んでいることを知りましょう。

内容そのものよりも、相手の人格や能力に信頼を寄せていることをまず理解してもらったほうが、会話がうまく進むこともあるのです。

メール送信の際もマインドフルネスを

メールやLINEなどというものはよく言われるように、面と向かってしなくていいところが最大の「長所」でもあり「短所」でもあります。

文字だけだと情動的な内容が間違って伝わることも多いのです。

たとえば「バカやろう」という言葉も、直接笑顔で言われたときは口調からも冗談とわかるものの、メールで来たら深刻に受け止めるかもしれません。

僕たちの脳は文字という限定されたデータから、不足したデータをでっちあげてしまうからです。

メールによるコミュニケーションの質を上げるのにもマインドフルネスが役に立ちます。

というのもマインドフルネスは、心の穏やかさだけでなく、洞察力をもって相手を気遣うことでもあるからです。

幻覚キノコのマントラ

ここまでで紹介してきた社会的技能を要約するもので、著者のメン氏がマントラのように繰り返している言葉が以下になります。

「彼らを愛せ。彼らを理解せよ。彼らを許せ。彼らとともに成長せよ」

この言葉を呪文として繰り返せば、やっかいな人間関係の大半がうまくいくとのこと。

友人に「マジックマッシュルームのマントラ」という名前をつけられたそうです。

記事26に続く

チャディー・メン・タン著『サーチ・インサイド・ユアセルフ

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