グーグルのマインドフルネス本『サーチ・インサイド・ユアセルフ』以下、SIY。
前回の記事からの続きです。
一見するとささいなことがトリガーとなって、大きな情動反応を引き起こすことがあります。
たとえば自分の家族が口にしたことに過剰反応し、キレてしまうなどなど。
このようなトリガーに対処するための最初のステップは、トリガーされたときにまず、そうと知ることです。
トリガーの裏には過去がある
相手の言葉が気に障ったとき、肉体的には呼吸が浅くなったり、鼓動が速まったりします。
情動的には闘争・逃走反応を経験し、自分が被害者であるかのように思い、非難や批判が頭に浮かびます。
これらの反応を引き起こすトリガーの裏には、たいてい長い過去があります。
あの人はまたあんなことをしている、と思って過去の記憶が蘇ってくる感じです。
また、自分はダメな人間だという思いがあると、他人の何気ない態度がトリガーとなって、見下されていると感じてしまうこともあります。
シベリア北鉄道
不意に湧き起こるネガティブな情動に対処するための練習を紹介します。
この練習は5つのステップからなります。
- 停止する(Stop)
- 呼吸する(Breathe)
- 気づく(Notice)
- よく考える(Reflect)
- 反応する(Respond)
それぞれの頭文字を取って、シベリア北鉄道(SiBerian North RailRoad)と覚えてください。
最初のステップである「停止する」が最も重要です。
トリガーの始まりのときに一瞬だけでも踏みとどまる「聖なる中断」ができてこそ、残りのステップが可能になります。
気づく・よく考える・反応する
聖なる中断ができたら、次は呼吸に集中し、心と体を鎮めます。
呼吸の次のステップは「気づく」こと。注意を体に向けて、自分の情動を経験します。
たとえば怒りを経験しているなら「私は怒っている」ではなく「私は体で怒りを経験している」と捉えてください。
そのあとで、この情動を正しいとか間違っているとか判断せず、できるだけ客観的に眺めます。
最後のステップは「反応する」で、ここまでくればポジティブな反応ができるはず。
実行しなくてもいいので、優しくてポジティブな反応を想像してください。
フォーマルな練習の概要
「シベリア北鉄道」のフォーマルな練習をざっくりとまとめます。
まずリラックスしたあと、ネガティブな記憶をあえて思い出します。
記憶に結びついている情動が起こったら、反応せずに停止して、呼吸に集中してください。
停止の状態にとどまることができたら、次は体の各部位に注意を向けます。
顔や首、肩や背中などの緊張のレベルなどを体感してください。
その情動にほかの人が関わっている場合「誰もが幸せになりたいと思っている」という前提のうえで、その情動を大局的に眺めます。
状況に対するポジティブな反応を想像できたら、意識を呼吸に戻してください。
最後、片手を握りしめ、そこに残っている情動をつかむイメージをします。
そして、ゆっくり手を開き、情動のエネルギーを手放したら、もうしばらくリラックスして終了です。
(本書では触れていないけれど、最後のあたりがまさにセドナメソッドです)
練習しておけば、とっさの場面で冷静になれる
この「シベリア北鉄道」を実生活で役立てるためには、最初の3ステップ(停止する・呼吸する・気づく)を座って練習しておくことです。
自分のトリガーされた状況を思い出し、シミュレーションしておくことで、とっさの場面でもうまくやれるようになります。
SIYの参加者の体験談にて、彼の姑のミスで、娘さんが危ない目にあったとのこと。
トレーニングしていたおかげで姑に暴言を吐かず、冷静に対処できたそうです。
過去を再解釈してトリガーの再発を防ぐ
シベリア北鉄道は「注意のコントロールから始め、認知的な変化に至る、情動の自己統制戦略」とみなすことができます。
応用例として、トリガーされた直後に「10まで数える」などの方法があります。
このような注意のコントロールは大切ですが、トリガーの背後にある問題が未解決なままだと、将来またトリガーされることになります。
だからこそ、状況の意味を再構成したり再解釈したりする認知的な作業も必要になってくるのです。
そのための練習が「よく考え、反応する」こととなります。
情動を受け入れる練習
仕上げの練習となるのが、進んで情動を経験し、受け入れる気持ちを生み出すことです。
練習法のひとつは「網の目化」と呼ぶもの。
自分を網戸のようなものとし、怒りや恐怖などの強い情動もそのまま通過していくイメージをします。
もうひとつの練習法は、自分の人生をコメディドラマであるふりをすること。
バカげた状況に陥るたびに、そこにユーモアを見出して楽しみましょう。
【記事17に続く】
チャディー・メン・タン著『サーチ・インサイド・ユアセルフ』
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