グーグルのマインドフルネス本『サーチ・インサイド・ユアセルフ』以下、SIY。
前回の記事からの続きです。
EQを伸ばすために、自分の体に注意を向けましょう。
というのも、情動や感情はどれも体と結びついているからです。
僕たちは、心よりも体で情動を経験しているといえます。
そして、注意を体に向けることで、知覚できる情動の解像度が上がるのです。
情動を高解像度で知覚する
解像度が上がるというのは、知覚が時間的にも空間的にも高度に洗練されるということ。
自分の情動をうまく知覚できるほど、その情動を管理しやすくなります。
映画『マトリックス』のネオが、飛んでくる弾丸をスローモーションで見るように、情動の湧き起こる瞬間や変化する様子を眺められるのです。
高解像度で知覚する能力を育てるためには、マインドフルネスを体に向けましょう。
たとえば「怒り」は、胸が締めつけられる感覚や浅い呼吸などと結びついています。
なので、身体感覚に注意していれば、怒りが湧き起こるのを予期でき、相手とケンカになったりする前に適切な行動をとれるのです。
体の声を聞けば直感力が上がる
情動というのは強い生理的要素を伴うので、僕たちも生理的なレベルで対処する必要があるのです。
そして、自分の体を高解像度で知覚する能力が育つことで、直感力も高まります。
なので、身体感覚の観察を学ぶことはとても実りが多いのです。
マルコム・グラッドウェル氏も「なんとなく」という感覚が正しいことを、体の生理的な反応と結びつけて説明しています。
ダニエル・ゴールマン氏は、大脳基底核が、直感的な感覚として「これは正しい、これは間違っている」を伝えるのだ、と述べています。
だから直感というものは体や腹の底で感じるものの、なかなか言葉で表現できません。
あるがままでいる経験が一番貴重
マインドフルネスによって注意力は鍛えられ、明瞭で安定したものになります。
その注意力を情動に向けることで、情動経験を高解像度で知覚できます。
そしてEQを伸ばす土台ができて、僕たちは幸せになれるわけです。
著者のメン氏は毎晩、寝る前に娘さんと2分間、マインドフルな状態ですごすのを習慣にしているそうです。
ただあるがままでいることを楽しむ、ただ存在するというのは、あたりまえであると同時に一番貴重な経験となります。
この経験を、メン氏はマインドフルネスを大人に教える上での基礎としているのです。
理解だけなら簡単にできる
マインドフルネスを人に教える際にありがたいのは、それが呆れるほどにやさしいことです。
僕たちはマインドフルネスがどんなものかを知っていて、すでにときどき経験しています。
簡単に言ってしまうと、マインドフルネスとは「ただあるがままでいるときの心」です。
とはいえ、その心を深め、持続させるのは難しく、練習する必要があります。
マインドフルネスそのものを理解するのはやさしいですが、あるゆる状況でマインドフルに存在していたいのです。
やさしい手法と、もっとやさしい手法
メン氏はマインドフルネスを経験する方法をふたつ紹介しています。
それは「やさしい手法」と「もっとやさしい手法」と呼ばれているもの。
「やさしい手法」では、2分間、自分の呼吸に注意を向け続けます。
「もっとやさしい手法」は、何もせずに2分間、ただ座っているだけです。
2分間だけ、何かを「する」のではなく「あるがままでいる」モードになることが狙いです。
単純な練習で人生が変わる
これら単純なエクササイズがマインドフルネスの練習になり、頻繁にやることで、本来の心にある穏やかさと明瞭さが深まります。
多くの人にとって、人生が変わるような練習になります。
何より素晴らしいのは、そのやり方を子供でもエンジニアでも知っていることなのです。
【記事06に続く】
チャディー・メン・タン著『サーチ・インサイド・ユアセルフ』
コメント