パウロ・コエーリョ著の小説『アルケミスト 夢を旅した少年』。
前回の記事からの続きです。
小説の構造としては前回の「エジプト思っていたより遠すぎてショックで死にそう」というシーンで第一部が終了となります。
今回から第二部となり、クリスタル商店でしばらく働いた後、また少年の冒険が再スタートします。
クリスタル屋で働く日々
クリスタル商人は小言の多いおっさんではありましたが、商品を売ったら歩合給を出してくれたりと、少年を正当にあつかいました。
少年のいまの目標は、お金を貯めて羊飼い稼業に戻ることですが、このペースのままでは1年くらいかかる計算でした。
店の外にクリスタルの陳列ケースをつくりたい、と少年は商人に提案しますが、新しいことをするのを商人は億劫がります。
でも少年が来てから商売がうまくまわるようになってきたのも事実でした。
商人は前兆に答えたいと言う少年に理解を示し、やりたいようにさせてもいいと思い始めます。
幸運が味方しているうちに
少年は今となってはピラミッドのことを考えると胸が痛みます。
しかしピラミッドを過小評価する商人に対しては「あなたは旅をする夢を持ったことがないのですね」と言ったりしていました。
2日後、商人は改めてなぜ陳列ケースを作りたいのかたずね、少年は以下のように答えます。
「幸運が自分の側にある時は、それを利用しなくてはいけません」
少年が言うには、ビギナーズラックが働いてるうちが華だということ。
商人にとっての聖地巡礼
商人はコーランに書かれているという5つの義務について語ります。
5つ目にあたるものが聖地巡礼で、少なくとも一生に一度は聖地メッカを訪れる義務があるということです。
商人は若い頃からメッカへの巡礼を夢見ていましたが、お金が貯まってからなどと考えているうちに、行くタイミングを逃してしまったらしいです。
じゃあ今から行けばいいのでは少年はたずねてみるのですが、商人はその夢を実現させてしまうと生きる意味がなくなりそうだということ。
少年が夢を実現しようとしているのに対し、商人はただ夢見ていたいだけだとちょっと自虐的に言い、少年に陳列ケースを作ることを許すのでした。
クリスタルのグラスでお茶を出す
それから2ヶ月が経過し、少年のアイデアは成功しクリスタルの店はますます繁盛しました。
すでにアラビア語もペラペラ話せるという有能な少年。
ウリムとトムミムでおまじないする必要もいくらい、エジプトへ行くことが夢物語ではなくなってきました。
でも少年は現時点では、貯まったお金で羊飼いに戻ることを目標としていました。
ある日、のどが渇いた様子のお客を見かけ、クリスタルのグラスを使ってお茶を売ることを少年は提案します。
商人は何も答えず、水ギセルを一緒に吸おうと少年を誘います。
おまえさんは本当に恵みだった
「おまえさんは、何を求めているのだね?」
商人の問いに対し、お金をかせいで羊を買い戻すためだと少年は答えます。
商人は、お茶を売る案がうまくいくとわかっていましたが、それに合わせて自分の生活を変えるのが億劫なのでした。
でも「おまえさんはわしにとって、本当に恵みだった」と続けます。
少年のおかげで商人も、今まで見えなかったものが見えるようになり、自分の可能性に気がついてしまいました。
逆にそのせいで、商人は自分が不幸になってゆくような気がすると言います。
「なぜなら、自分はもっとできるとわかっているのに、わしにはそれをやる気がないからだ」
マクトゥーブ
アラビア語をはじめ、世の中には羊に教えてもらえないこともたくさんあるのだと、少年は老いた商人を見ながら思います。
「マクトゥーブ」と商人は最後に言いました。
訳するのが難しい言葉ですが、「それは書かれている」というような意味らしいです。
商人は水ギセルの火を消しながら少年に、お茶を売る商売を始めてもいいと言います。
川の流れはもうとめられないとわかっていたのでした。
【記事08に続く】
パウロ・コエーリョ著『アルケミスト 夢を旅した少年』
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