『脳を司る脳』
例えば脳細胞と聞くと、僕の場合ニューロンとかシナプスとか、それらが信号を伝え合う感じの想像をします。
この本を読むと、これまであまり役割がわかっていなかったグリア細胞とか、脳の隙間を満たす液体とかもすごい働きをしていることがわかり、脳は全体としてすごいシステムになってるんだなと感動します。
感動するだけでなく、脳に対する知識が深まるほどに、脳の健康を保ったり鍛えたりするためのメカニズムがわかり、より良く生きていくための役に立つはずです。
この記事は僕が本書をオーディブルの朗読で聴き、断片的なメモと記憶を頼りに感想をまとめたものです。参考程度にしておいてください。
脳全体のシステム
脳は情報を伝達するために電気信号を出したり、様々な周波数の脳波を出したりします。
それらの研究がメインで行われてきた歴史があるので、それらが脳の働きのすべてだと思われがちなのですが、実際は全体の一部にすぎないらしいです。
そもそも、神経細胞のニューロンだけに焦点に当てるのは、時計の部品のひとつを取り出して調べるようなもので、全体を理解できてるとはいえなくなる感じです。
著者の毛内先生は、その脳全体のシステムがかなり見えてるんだろうなと、読んでて思いました。
神経伝達物質のタイプ
神経伝達物質についても伝達方法は物質によっていろんなタイプに分かれます。
セロトニンやノルアドレナリンは、広範囲にバラまいて、相手側に受け取ってもらうタイプらしい(こんな表現でよかったかどうかですが)。
ここで受け取られなかったものはゴミ箱の役割を担う部分に取り込まれ、使われずに分解されます。
抗うつ薬と呼ばれる薬は、このゴミ箱の蓋を塞ぐことで、相対的にセロトニンやノルアドレナリンの量を増やす作用があります。
シナプス可塑性
ニューロン同士を繋ぐ手のようなものがシナプスで、「シナプス可塑性」と呼ばれる性質を持っています。
シナプス可塑性とは、使われることで増えたり、構造が強くなったりするシナプスの性質のことです。
昔は、脳細胞は年とともに減っていくので、鍛えることはできないと言われていました。
でも、シナプス可塑性のおかげで人は何歳からでも脳を鍛えて強化することができるわけです。
また脳の強化という観点だと、それ以外の要素もたぶんいろいろあるはずです。
脳内無線伝送
ちなみの、シナプスを介する伝達を有線とするなら、シナプスを介さない無線の伝達方式も存在するとか。
脳内でWiFiのようなやりとりが普通に行なわれているらしいのです。
すると、シナプスの機能が強化されているとか、結合数が増えているとかとは別の領域でも、頭の善し悪しなどといったものが関わってきそうです。
このあたりの研究もけっこう昔から行われていたのが、ようやく本格的に注目されてきたとのこと。
アストロサイト
脳細胞にはニューロンの他にグリア細胞と呼ばれるものがあり、そのグリア細胞のひとつがアストロサイト。
(このアストロサイトっていう名前がなんとなくかっこよくて好きです)
ニューロンのように電気信号を発するわけでもなく、何の役に立っているのかわからなかったアストロサイトですが、研究技術の進歩によりようやく日の目を見るようになってきました。
ニューロンに栄養補給を行なったり、その活動を調節したりと、かなり重要な役割を担っていたわけです。
脳脊髄液
髄液、脳漿とか呼ばれる透明な液体が脳の隙間を埋めています。
緩衝材としての役割を果たしているのかな程度に思われていたのが、この脳脊髄液は循環して脳全体をきれいにするという役割も持っているらしいです。
脳細胞が出す老廃物のようなものは掃除されないと脳の働きに悪影響を及ぼすので、脳脊髄液の流れもかなり重要だと思います。
これも、脇役扱いされてきたものが意外と大事だという話の一例です。
知能と知性の違い
AIを「人工知能」と呼ぶけれど「人工知性」とは呼びません。では知能と知性の違いはなんなのか。
それは「答えのあるものに対し、その答えを導き出すのが知能であり、答えのなさそうのものに対しても深く考えようとするのが知性」という感じです。
毛内先生は知能的な部分をニューロンなど神経細胞が担当し、知性的な部分は神経細胞以外が担っているのではないかと仮説を立てていて面白いです。
脳のことを調べるのって、ちょっと危ないとろに踏み込むような気がして冒険心をそそられますね。
終わりに
以上、講談社ブルーバックスの本だけあってかなり専門的な内容のところを、自分が理解できた範囲でかいつまんで書いてきました。
(自分がわかりやすい表現にしてしまっている部分が多いので、あまり鵜呑みにしないよう気をつけてください)
もし今後脳の研究が進めば、もしかしたら意図的に天才的な頭脳を作ったり、精神的な疾患を即効で治したり、寿命がなくなったり…とSFのようなことが現実になるかもしれません。
科学用語が多くてちょっと読むのが大変でしたが、夢の膨らむ一冊でした。
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