『サーチ・インサイド・ユアセルフ』要約#26 オープンソース化に向けて

瞑想

グーグルのマインドフルネス本『サーチ・インサイド・ユアセルフ』以下、SIY。

前回の記事では、メールの作成や送信をマインドフルネスとつなげたりといった、ある意味グーグルらしいともいえる内容でした。

本書もやっと終盤にさしかかり、SIYが誕生するまでの裏話などが中心となる、読んでいて楽しい内容になっていきます。

今回も含めてあと数記事で完結する予定なので、もうしばらくお付き合いください。

世界平和を実現する方法

著者のメン氏の夢は世界平和であり、それにはまず自分の中に平穏を生み出せばいいと考えました。

その方法がいわゆる瞑想で、沈思黙考を通して自分の心を育てていく技です。

心がリラックスかつ隙のない状態になれば、「穏やかさ・明瞭さ・幸せ」という3つの特質が現れてきます。

内面の幸せは伝染するので、自分のまわりの人も、以前よりポジティブに反応するようになります。

そして社会的に幸せになり、それがまた内面の幸せにもつながるという好循環が生まれるのです。

誰もが恩恵を受けられるように

このトレーニングは自分を強制してスキルを身につけていくようなものではありません。

すでに生まれつきあるものを開花させるように、お膳立てをするだけでいいのです。

世界平和といった手に負えなさそうな問題の解決方法は、瞑想のような単純なことなのかもしれません。

メン氏はただ、瞑想の恩恵を誰もが受けられるようにしたいと思っているだけです。

その実現のために、彼は「自分から始める」「瞑想を科学の一分野にする」「瞑想を実生活と整合させる」という3つのステップとして考えます。

瞑想を科学の一分野にする

最初のステップである「自分から始める」は、マハトマ・ガンディーに由来します。

自分が目にしたいと思うものに、自分自身がまずなるわけです。

次のステップ「瞑想を科学を一分野にする」は、医学を引き合いに出すと納得がいきます。

19世紀に入って医学が科学の一分野となってから、神秘的な要素がごっそり取り除かれました。

その結果、医療サービス提供者の訓練と資格が大幅に改善されたらしいので、瞑想についてもそうなってほしいとメン氏は考えます。

よって彼が瞑想を「データ主導」にし、科学との融合に取り組んでいたところ、ダライ・ラマも賛同してくれたとのこと。

「ダライ・ラマ法王と私がそろって間違ってるなんてことはないだろう」とメン氏。

また彼は『スタンフォードの脳外科医が教わった人生の扉を開く最強のマジック』の著者であるジム・ドゥティ氏にも協力しています。

瞑想が運動くらい普通になってほしい

瞑想が山奥で修行する人々や、アメリカ西海岸のニューエイジな人々のものにとどまっていては、その恩恵に大勢の人がアクセスできません。

あくまでも「実社会のもの」になる必要があり、普通の人の生活や関心と、瞑想が整合する必要があります。

体を動かす運動が心身の健康にいいことは、今ではあたりまえのこととして知られています。

瞑想も運動くらい世間で一般的になるように、とメン氏は動いていたわけです。

EQ向上の手段としての瞑想

彼はダニエル・ゴールマン氏の提唱する「EQ」が、瞑想普及のカギを握っていると考えました。

心の知能指数と呼ばれるEQについて完全に理解している人は少ないものの、それが仕事にも人間関係にも役立つことをなんとなく知っています。

EQが向上すれば生活に役立つだけでなく、内面の幸せや共感、他人への思いやりが増します。

そして、そのEQを育てるための方法がマインドフルネス瞑想であり、メン氏は「これだ!」と悟ったのです。

彼はグーグルの社内で瞑想講座を完成させ、それをグーグルからの贈り物のひとつとして世界に発信しました。

講座名はSIY、そしてオープンソース化

メン氏はそれから禅師や科学者、セラピストなど著名な人々をたくさん味方につけてチームを編成します。

チームのひとりが講座名を「サーチ・インサイド・ユアセルフ(己の内を探れ)」と提案し、ウケたので採用となりました。

2007年以来、この講座はグーグルで教えられ、十分に効果を発揮することがわかりました。

そして「オープンソース」化し、グーグル以外の人にもアクセスできるようにしていったのです。

(本書もその活動の一環であり、だからこそ僕もこうしてコツコツ要約記事を書いてきました)

記事27に続く

チャディー・メン・タン著『サーチ・インサイド・ユアセルフ

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