グーグルのマインドフルネス本『サーチ・インサイド・ユアセルフ』以下、SIY。
前回の記事からの続きです。
自己認識の能力を高める練習方法として、前回はボディ・スキャンを紹介しました。
今回はもうひとつの方法である「ジャーナリング」を紹介します。
ジャーナリングは「書く瞑想」とも呼ばれ、思い浮かぶことをどんどん書き出していくという方法です。
判断や評価をスキップして書き続ける
練習方法は単純で、まず3分くらいでもいいので制限時間を設定します。
そして適当な話題、たとえば「今、僕が感じていること」「今日の楽しかったこと」などを自分に与えます。
それについて思い浮かんだことを次々と書き出していってください。
守るべきルールは「時間になるまで書くのをやめてはいけない」ということだけです。
書くことがないと思ったら「書くことがない、何を書けばいいかわからない」とでも書いてください。
これは自分に向かって書いているのであって、誰かに見せる必要はありません。
SIYでのジャーナリングの練習
ジャーナリングは「思考と情動を対象とするマインドフルネス」とみなすことができます。
自分に湧き起こる思考や感情を、評価や判断をせずに注意を向けるために、書くという行為が役に立つのです。
思考の流れを見える形にするという単純な作業ですが、やってみると頭の中がすっきりする感覚がわかると思います。
SIYでのジャーナリングの練習は、書く前にまずリラックスして、自分にとってのポジティブな経験を思い出します。
その後に「私を愉快にしてくれるのは」「私の長所は」などをテーマに書き出してください。
今度は逆に、ネガティブな記憶をいくつか思い出したあと、30秒ほどリラックスします。
そして「私をいら立たせるのは」「私の短所は」などをテーマに書き出してください。
終わったら、しばらく時間をかけて自分で書いた内容を読み返してみます。
私の情動では私ではない
自己認識が深まってくると、「自分の情動」と「自分自身」は別物だということに気づきます。
例えばこれまで「僕は怒っている」だったのが「僕は怒りを感じる」に変わります。
この気づきは、微妙ではあるけれどかなり重要なものです。
なぜならこれは、自分の情動を克服することにつながるから。
情動というのは自分ではなく、自分の経験にすぎません。
思考や情動、感情が空に浮かぶ雲だとしたら、私たちの核をなす存在は空そのものなのです。
衝動から選択へ
自分の情動というのは、制御のきかない暴れ馬によくだとられます。
ただ、幸いなことにこの馬は調教していくことができます。
これまでに理解してきた自己認識を利用して、自分の情動を支配する方法をこれから学んでいきましょう。
ダニエル・ゴールマン氏のいう「自己統制」は、たんなる自制心よりも広い範囲の能力を指します。
それには自制心のほか、信頼性、良心性、適応性、革新性を含みます。
これらの能力の根底にあるのが「選択権」です。
僕たちが「衝動」を「選択」に変えることができれば、これら自己統制の能力をすべて発揮できるのです。
自己統制は情動を抑えることではない
自己統制とは情動を抑え込んだり、避けたりすることとは違います。
自分の本当の気持ちを否定したり抑えつけたりせず、注意深く耳を傾けることが大切です。
たとえば仏教では「怒り」と「憤り」を区別しています。
怒りを感じているときは自分をコントロールできなくなるけれど、憤りを感じているときはコントロールできます。
なので、憤りの状態は自己統制の能力が本領発揮している好例ともいえます。
【記事15に続く】
チャディー・メン・タン著『サーチ・インサイド・ユアセルフ』
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