中村天風の講演録『君に成功を贈る』。
この本は電子書籍版がないうえに最寄りの大きな本屋さんにも置いてなかったため、ネットで購入しました。
装丁はしっかりしていて文字は大きめで、260ページくらいあるけれど文字数に換算したら100ページちょっとくらいだと思います。
それでも1980円がまったく高い気がしないくらいに素敵な、本質的な内容でした。
天風氏がおそらく90歳近いくらいのときに講演したものを本にまとめた感じで、『運命を拓く』よりも万人向けに話したであろう講話集といえます。
数回にわけて要約し、エッセンスを伝えていきたいと思います。
成功というタイトルだけど
ちなみに僕は正直「成功」という言葉はあんまり好きではなくて、人間の生き方を成功と失敗にわけるなんておかしいと思ってます。
そんな考えの人は僕以外にもいるでしょうが、この本、読んでも大丈夫です。
前書きにおいて、天風氏のいう成功は、心のありかたと使い方の調和がとれれば自然にもたらされるものだという説明がされています。
ちなみにさりげなく英語の副題『Here is a ticket to success』があり、僕はこっちのほうが好きです。
文章量がそんなに多くなくて読みやすいけれど、ただある程度は「行間を読む」能力は必要かもしれません。
では本文の要約に入っていきます。
他人に好かれることはやっぱり大事
人間として生まれた以上は、有意義で幸福な人生を生きたいと誰もが願っているはず。
実現するには第一に、人間というものをつくらなければなりません。
何においても一番先に必要なのは「人に好かれる人間にならなければならない」ということです。
(もちろん嫌われることを過度に怖れてはダメです。アドラー心理学と別に矛盾はしてません)
学問や経験があっても、なんとなく他人から好かれない人というのは有意義に生きられないものなのです。
豊臣秀吉が異常に出世したのも、人に好かれるという要素があったからです。
信長も理屈抜きに「俺、あいつ好きだし」と秀吉の地位をどんどん上げていったわけです。
好き嫌いをなるべくなくす
好かれることで、たいした努力をしなくてもあらゆる人と打ち解け、幸福な人生を生きられるようになります。
好かれる人間になるには、まず何よりも自分が好き嫌いをなくしていくことです。
「すべてのものを憎まない」という気持ちを、自分の心に持つようにしましょう。
また、ためになる話を聞くチャンスに恵まれたら、煙たがらずに「受け入れよう」という姿勢でいることです。
天風氏の話も「有意義な人生なんか自分にはいらない」と思う人は聞かなくてもよいです。
「いや、俺は苦労してのたうちまわりたいんだ」という人は精神に異常があるかもしれません。
自分自身の好き嫌いが多いと、他人からも同じように扱われるものです。
人は人のなかで生きているのだから、他人を嫌いにならないようにするのが基本です。
気持ちを切り替えて、嫌いだと思う相手に対して、つとめて親切にするよう心がければいいのです。
最初はうまくいかないし、相手の態度しだいでいやになるかしれませんが、途中でやめずに練習することが大切です。
自分にするときくらいの気持ちで、他人のことをしてあげる
「真心の親切」でもって他人に接する、これは難しく思えるかもしれませんが簡単です。
自分のことになったら誰でも真剣にやるのだから、それと同じ気持ちで他人のことをすればいいだけです。
自分のことは誠心誠意、他人のことはいい加減、という悪い癖に気づかずやっているのはよくない。
また、人にほめてもらいたいとか報酬を目的にしてもいけません。
日本以外の西洋などでも「If I were him」もしあの人が僕だったら〜という言葉があるように、他人を思いやることが大切という思想は万国共通です。
そして「他人に迷惑をかけない」ということも大切です。
自分の言葉や行動によって、他人を怒らせたり、心配させたしないように。
また、他人から受けた好意に対してはささいなことでも深い感謝で受け入れましょう。
現在恵まれていることに感謝しよう
働くというのは、人間として生まれた者に与えられた大きな恩恵です。
こうして生きていく際に与えられている、見えない恩恵に気づく人はどれだけいるでしょうか。
野菜でも、魚や肉でも、みんな生きていたのに、苦情も言わずに生命を提供してくれます。
だから箸と茶碗を手にした瞬間、これから食事ができることに感謝しましょう。
病になっても、運命が悪くなっても感謝することが大切です。
これは理解しづらいかもしれませんが、例えば病気をしていても、いま死なずに生きているわけです。
また不運と思える状況になったからこそ、いまこうして真剣に人生について考える機会に恵まれたのかもしれません。
だから不平不満を言っていい状況は存在しないということ。
昔から言われているように「心ひとつの置きどころ」なのです。
自分で自分を磨いていこう
人間というのは一度死んでしまうと二度と出てこられないわけですが、その現実をみんなわかっているように思えません。
やり直しのきかない人生を生き、それを価値なく終わらせてしまったら、何のために生まれたのかということになります。
だから、有意義なものにするためにはまず、自分の心のあり方を替えなければなりません。
そのためには他人に好かれるようにし、他人に好かれるためには好き嫌いを言わないことです。
同時に「もしも自分があの人ならば」という真心で人に親切にしましょう。
「天は自ら助くるものを助く」なのです。
(次の記事に続く)
『君に成功を贈る』中村天風
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