中村天風の講演録『君に成功を贈る』。
前回の記事では「幸福な人生を送る」の章を要約しました。
今回は「強い命をつくる」の章。
偶然の機会で聞かされた話が一生ものになることも
天風氏がある日、大阪の梅田駅のあたりで75才くらいのおじいさんに話しかけられたそうです。
(ちなみにその話をする当時の天風氏も90近いおじいさん)
そのおじいさんは昔、陸軍大学の在校中にたまたま天風氏の講演を聞き、その約1時間の話をずっと覚えていたおかげで数々の死地を乗り越えたということです。
なので偶然の機会で聞くものはバカにできないものです。
(そう考えると、僕がこのタイミングで天風氏の本を読むことになったのも何か意味があるような気がします)
物質文化ばかり重視され、精神文化がおろそかに
今回の天風氏の話は心の問題についてであり、漠然としているものの真剣に考えるべき問題です。
天風氏からすると、1945年以前の人々のほうが、心に対する価値を高く認識していたとのこと。
現在(天風氏が講演した1960年代)においては、肉体ばかり尊重されて心はどうしてもおろそかにされています。
だからまず心の重大性から理解してもらえないことには、以降の話も納得してもらえません。
言うまでもなく、人生というのはたった一回限りなので、価値高く生きなければ生まれた甲斐がないというものです。
心についての正しい認識を持ち、かけがえのない人生に応用しましょう。
心が不完全だと命そのものが不完全に
以降の話を深く納得し「信念」にならないまでも、理解して「観念」くらいなれば今後に大きく役立つはずです。
命というものは、目に見える肉体と目に見えない心によってできています。
大事なのは「心が完全でないと命そのものが不完全となる」ということ。
そして心と肉体を結びつけている回路の存在にも気づいてください。
生きる手段として「食べて寝て起きて、呼吸して」などがありますが、ではなぜ僕たちは生きていられるのでしょうか。
人間というものが、どうして生きていられるのか
天風氏は若い頃、軍事探偵としてモンゴルに派遣され、無鉄砲な生活を送っていました。
戦争が終わった後になって病に侵されるのですが、これは天風氏が当時、心の肉体の関係を知らなかったからだと言います。
心と肉体を結びつけているものは神経系統であり、これが働かなくなることで悲惨な状態となります。
軍事探偵の募集は秘密裏に行われ、その採用試験は現在では考えられないような内容だったそうです。
応募してきたのが3000人、受かったのが当時の天風氏を含め200人でした。
そして訓練内容も過酷なもので、五日間、鰹節一本だけで天井裏に忍ぶとか。
よりすぐりの200人でも、約半数が精神を病み、残ったのは113人だったそうです。
「もしも軍の先輩に今の私のような人がいて、心と肉体との関係を教えていたならば…」と天風氏は当時を振り返るのでした。
神経系統が機能することで人間は生きていられす。
この神経の働きを保持するために重要なのが「積極的な心の態度」であり、心をいつも明るく朗らかにすることです。
命が大切だと思うなら、心を積極的に保つ必要があるのです。
病や不運は自分が犯した罪の結果だ
天風氏は軍事探偵をやっていた頃は健康そのものだったのが、戦争が終わり危険のない任務についた3ヶ月後に結核に侵されます。
軍医からも絶対安静と言われ、看護師からも「この病で助かったものはいない」と言われます。
これまで死ぬことをなんとも思っていなかったはずの天風氏も、心を恐怖に包まれてしまうのでした。
なぜ自分がこんな目の遭うのか、その答えは後になってインドの先生から教わります。
天風氏は病を治すため、欧米の権威者を次々に訪ねますが、結局まともな答えを得られませんでした。
どうせ死ぬなら故郷でと、日本に帰る途中、エジプトのカイロにてその先生に出会いました。
先生はカリアッパ師といい、イギリスの皇室に招待された帰りだったそうで、彼についていってインドの山奥で天風氏は修行することになります。
この世に無から有は生じず、天風氏の病にも原因があるとカリアッパ師。
その原因は、戦時中とはいえ天風氏がスパイ時代に人を殺めたことがあるからだと言います。
自分が知ってか知らずに関わらず、降りかかる不運や不健康の原因は自分にあるのだ、と天風氏は気づくのでした。
心をピュアな状態に
病を治すためには、肉体のことばかり考えているのではなく、心を積極的にするのだとカリアッパ師は言います。
心を生まれたての赤ん坊のようにピュアな状態に、つまり「尊く、強く、正しく、清らか」にするのです。
現代のような情報過多の時代では、どうしても心が汚れてしまうので、意識して心を清らかに保たねばなりません。
心が汚れると神経系統の働きが弱まり、生命力が失われ、魂の抜け殻みたいになってしまいます。
自分の心に「悲観的なもの」「消極的なもの」をいっさい入れないように。
そのためにはまず自分が「困った」「腹が立つ」「助けてくれ」などといった言葉を口にしないことです。
言葉を発すると、その言葉通りの影響が現れるという作用があるからです。
具合が悪いときに「具合が悪い」と言って、それが治るでしょうか。
「ありがたい」「楽しい」「嬉しい」といった積極的な言葉を発していれば、期せずして病も運命も良くなっていきます。
寝るときは嬉しいことや楽しいことを考えよう
現代の世の中は消極的な暗示で充満しています。
マスメディア以外にも、人との会話においても消極的な言葉に引っかからないようにしましょう。
言葉にネガティブさを感じたら、受け入れずに打ち消すのです。
態度のほうも大事で、人と接するときは明るく朗らかに、勇ましく対応しましょう。
積極的な心をつくる一番簡単な方法は、寝床でネガティブに考えるのをやめることです。
寝ぎわには嬉しいことや楽しいことを考えながら、きれいな心で寝るようにしましょう。
(次の記事に続く)
『君に成功を贈る』中村天風
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