『ニューアース』ちょっとずつ要約#18

読書

エックハルト・トール著『ニュー・アース』。

前回の記事では第8章の1〜5節までを要約しました。

今回は6〜10節です。

全集中、もとい意識的な呼吸が内なる変容をもたらします。

谷川のせせらぎが聞こえるか?

ある禅の老師が弟子を連れて、山道を歩いていました。

弟子の若い僧が老師に尋ねました。

「師よ、禅に入るためにはどうすればいいですか?」

老子は5分間黙っていて、弟子は答えを待ちました。そして老師がふいに言いました。

「お前にはあの谷川のせせらぎが聞こえるか?」

弟子は考えることで頭がいっぱいで、せせらぎに気づいていませんでした。

でもそう言われて耳を澄ますと、騒がしかった心の雑音がやみ、遠くからかすかな川の音が聞こえてきました。

「はい、いま聞こえました」

老師は指を立て、慈愛に満ちた目で弟子に言いました。

「そこから禅に入りなさい」

弟子にとってはこれが最初の悟りの一瞬でした。

その後で、弟子はまた老子に質問します。

「師よ、さっきせせらぎが聞こえないと私が答えたら、師はなんとおっしゃったのでしょう?」

「そこから禅に入りなさい」

正しい行動

「いまに在る」とは、内に広がりがある状態です。

そのときあなたは状況とひとつになります。

状況に対して反応するのではなく、状況とひとつになると、解決策は自ずと現れます。

行動が可能であるなら、行動があなたを通じて起こります。

正しい行動は、全体にとって適切なものです。

行動が完了したとき、研ぎ澄まされた広やかな意識はそのまま残ります。

すべての創造性は、内なる広がりから生じます。

そこに「私の」だの「私のもの」だのが現れないように気をつけなくてはなりません。

エゴが戻ってきて、せっかくの広がりが邪魔されます。

ただ認識する

ほとんどの人の現実において、何かを認識するとすぐに、幻の自己であるエゴがそれに名前をつけてラベルを貼ります。

そしてそれを解釈し、何かと比較し、好き嫌いや善悪を決めるのです。

この無意識の脅迫的なラベル貼りがやまない限り、少なくともその行為に気がついて観察できるようにならない限り、スピリチュアルな目覚めはありません。

身近にあるモノを選んで観察してみましょう。

緊張せずリラックスして、でも感覚を研ぎ澄まして、すべての関心をモノに注いで観察するのです。

比較や判断をせず、ただそれを観察することができるでしょうか。

同じように、次は物音に耳を澄ましましょう。

良い音とか悪い音とかの解釈なしに、ただ音を聴けるでしょうか。

こんなふうに見たり聞いたりしていると、最初はほとんど気づかないような不思議な静謐さが生まれることがわかるかもしれません。

経験しているのは誰?

見る、聞く、触るなどの経験をしている主体は誰なのでしょうか。

その答えが「もちろん私、名前はジェーンで45才、会計士をしていてアメリカ人。これが経験の主体ですよ」といったら間違いになります。

ジェーンも、ジェーンと同一化されている事柄も、経験の対象であって、主体ではありません。

すべての経験には3つの要素が考えられます。

感覚的認識、思考あるいは精神的イメージ、感情です。

「あなたは何者か」というような定義を増やしていっても、経験の複雑さが増大するだけです。

これではすべての経験に先立つ主体には行きつきません。

経験しているはあなた、あなたとは意識、それでは意識とは?

この質問に答えた瞬間、対象をモノ化してしまうことになります。

意識とはスピリット(霊)で、言葉の通常の意味で「知る」ことはできません。

「私」には形がないからです。

形のない次元とは、世界が立ち現れては消える明るい空間です。

その空間が生命であり、「私は在る」ということです。そこには時間はありません。

「私は在る」も永遠で、時間を超越しています。

その空間で起こることは相対的であり、一時的です。喜びと苦しみ、獲得と喪失、生と死。

内なる空間、経験の主体を見つけるうえでの最大の障害は、経験への没入により自分自身を失うことです。

意識が自分の夢に呑み込まれてしまっているのです。

意識を知ることはできなくても、意識を意識することはできます。

本を読んだり考えたりしている言葉は前景で、「私は在る」は基部、すべての経験や思考や感情を支える背景です。

呼吸

思考の流れを中断して、内なる空間を発見しましょう。

中断の長さは気にしなくてよくて、大事なのは頻度です。

日々の活動や思考の流れを、この空間で頻繁にさえぎることです。

トール氏はある人にスピリチュアルな事業計画を見せてもらったことがあるといいます。

ビュッフェ形式のレストランを思わせるような、様々なセミナーやワークの数々でした。

見せてくれた人にトール氏は言いました。

「できるだけ頻繁に、思い出すたびに自分の呼吸を観察すること。これを1年続ければ、ここにあるすべてのコースに参加するより効き目があるよ。無料だし」

意識的な一呼吸、これを一日のうちにできるだけ多く繰り返すこと。

これは人生に空間をつくるすばらしい方法です。

呼吸に気づけば気づくほど、呼吸は自然な深さを取り戻していきます。

呼吸には形がないから、昔からスピリット、形のない生命と同一視されてきました。

これも呼吸の観察が、生命に空間を創り出す、つまり意識を生み出すきわめて効果的な方法である理由の一つです。

形がないからこそ、瞑想のすばらしい対象となります。

正式な瞑想としてやるかどうかはどちらでもいいので、日常生活のなかに空間の意識を取り入れましょう。

呼吸を観察すると、いやおうなしにいまこの瞬間に「在る」ことになります。

これが内なる変容の鍵です。

考えながら呼吸を観察することはできません。

完全にいまこの瞬間に在ることと、意識を失わずに思考を停止することは、実は同じなのです。

次の記事に続く



audiobook.jpで『ニューアース』の朗読版を聴けます。

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