境野勝悟著『超訳 般若心経』。
前回の記事からの続きで、今回で本書の最後まで要約します。
般若心経の最後の一節「羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶」は、真言(マントラ)です。
このマントラを口ずさんだり心の中で唱えたりしていると、なんとなく心が落ち着き、疲れが取れるような気がします。
人間の言葉を使わない
天地自然とか神に祈るとき、人間の言葉では通用しないから、意味のない、しかし美しく力強い音を発生するわけです。
般若心経のマントラは、病気の治癒や災害防止を目的として唱えるのではありません。
苦悩の根元である一切の雑念、妄想を「空」にし「無」にするためです。
そして本来からある叡智の灯に点火するのです。
音が苦悩を解消する
お金や地位に恵まれていて、幸せそうに見える人でも、心の中ではずっと「死にたい」と思っていたりします。
仕事も学歴も関係なく、ちょっとでも人生を喜び愛する心があれば、人は幸せになれます。
坐禅修行をするのが効果的ですが、足が痛いとかお寺が嫌いという人のためにあるのがマントラです。
「音」によって心にこびりついた苦悩を解消するのです。
能除一切苦
僕たち一人一人にはそれぞれの叡智や感性がそなわっていえ、それらを発揮できないのは様々な記憶がおおい被さっているせいです。
マントラによって記憶の山を消すことができ、本来の個性が引き出されます。
また、変化することへの抵抗もなくなり、いくら変わっても大丈夫だと思えるようになります。
苦悩はなくなることなく押しよせてきますが、放っておけばよいのです。
科学でも認められた呪文の効能
脳科学者の養老孟司氏も次のような言葉で呪文の効能を認めています。
「単純な言葉を繰り返し唱えていると、脳の今まで眠っていた領域が目覚める」
般若の呪文(真言・マントラ)は、能力開発に絶大な威力を持っています。
ただ世俗的な欲望をかなえるためというよりも、それを超越したもった根本的な機能に働きかけます。
理屈は抜きにして繰り返そう
理屈を考えなくていいので「ぎゃーてーぎゃーてー……」と真言を繰り返し言葉にしていればいいのです。
悟るとか悟らないとかにもこだわる必要はなくて、ひたすらやっていればそのうち脳が開発されていきます。
(坐禅にしても理屈ぬきにひたすら坐り続ければ、大丈夫です)
人の言葉に限らず、美しく単純な音を聴き続けることで潜在能力が活動を始めます。
渓流の音に聴きいることで、ごちゃごちゃとした心も晴れてくるはず。
お釈迦さまが説く仏教の大事な教えに「抜苦与楽」があります。
「このすばらしい世界を、どうか苦しまないで楽しく生きてください」ということです。
最初の25文字で結論を言っている
般若心経の要点は、最初の一節「観自在菩薩〜度一切苦厄」までの25文字に集約されています。
とある修行僧がいろいろトレーニングしているうちに、自分の「価値判断」があらゆる苦しみの原因だと気づいたということ。
僕たちをしばっている「価値判断」なるものは、他から受け入れた記憶のゴミのようなものです。
本論といえる「舎利子」から「得阿耨多羅三藐三菩提」までの172文字は、頭で理解しようとしてもそうそうできません。
「空」とか「不」とか「無」という言葉だらけで、要は自分の固定観念をとにかく打ち消すことを強調しているわけです。
脳にやすらぎを与える音
そして最後のマントラですが、意味のない音を唱えると心が落ち着くなんて納得できないないかもしれませんが、事実です。
ハミング、口を閉じてメロディーだけを歌ったいるだけでも心が安らぎます。
また女の子の笑い声や、小鳥のさえずりなどの音の響きそのものが脳にやすらぎを与えます。
いろいろな真言・マントラ
最後に古代から伝わる真言・マントラをいくつか紹介します。
- おんあびらうんけん(大日如来の真言)
- のうまくさんまんだぼだなんばく(釈迦如来の真言)
- おんあみりたていぜいからうん(阿弥陀如来の真言)
- おん、あぼきゃ、べいろしゃのう、まかぼだら、まに、はんどま、じんばら、はらばりたやうん(光明の真言)
そして冒頭でも紹介した、般若菩薩の真言があります。
「ぎゃーていぎゃーてい、はーらーぎゃーてい、はらそうぎゃーてい、ぼーじーそわかー」
この一節が最強のマントラですが、もはや般若心経の262文字すべてがマントラなのです。
各記事へのリンク
【記事01】般若心経の冒頭から「度一切苦厄」までの要約。
【記事02】「舎利子〜無受想行識」の要約。
【記事03】「無眼耳鼻舌身意〜無智亦無得」の要約。
【記事04】「以無所得故〜依般若波羅蜜多故」の要約。
【記事05】「得阿耨多羅三藐三菩提」あとマントラについていろいろ。
境野勝悟著『超訳 般若心経』
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