前回の記事からの続きです。
引き続き業(ごう)がテーマとなります。なかなか向き合う気になれないのもまた自然な反応ですが、業を抜ければきっと人生変わります。
今回はまず「親の業」から自由になることについて。親なんて関係ないと思うかもしれないものの、意外とストレスの根底になっていることが多いのです。
悩みの根底に「親の業」があるかも
たとえば著者草薙氏に相談にきたある30代の女性は、仕事はできるけど上司に対して拗ねたり反抗的になったりしていたそうです。
その根底には「もっと承認してほしい」という心の飢えがあることがわかってきました。
掘り下げると彼女の親が「怒りの業」などをかかえて、彼女に対し厳しく接していたなどの事実が上がってきます。
このように、業は親から子へ受け継がれていきます。また、そのまま親から学ぶパターンと、親に反発して自分自身で怒りの業を育てるというパターンに分かれます。
「親のこと嫌いだったけど、いざ自分が大人になったらその親そっくりの性格になっている」みたいな。
親と距離を置き、客観的に理解する
親の業に影響されていると認めることができたら、次のステップとしてまずは親の業(性格や心のクセ)を客観的に理解しようと努めてください。
そして、できるならその親と距離を置くことです。
親を観察して、その業にぴったりのラベリングをしてみましょう。例えば「干渉魔」「気分屋」など。
こんなふうに客観的な理解を試みることで、だんだん親の呪縛から自由になっていくはずです。
誰とどのように関わるか自分で選ぶ
親元を離れるなど、物理的に距離を置くことで状況が劇的に変わる人はたくさんいます。
自分の業から自由になるためにはそうするしかない、という人が一定数いるわけです。
どうしても親と物理的に距離を置けないという人は、せめて精神的な距離を置きましょう。
「自分の人生は、この人とはまったく別物なのだ」と、毅然として割り切るようにするのです。
仏教では親子という関係も、ただの概念として扱います。夫婦関係も含め「絶対に関わらなければいけない関係などはない」と考えます。
誰とどのように関わるかは、自分で決めたものが正解なのです。
業は社会の裏テーマ
業というものは、誰もが抱えているのに、その越え方を知らないので、社会に潜む巨大な裏テーマといえるかもしれません。
だからこそ本書のクライマックスとして業をテーマにしているわけです。
業を乗り越える生き方を選択することで、多くの苦悩を解決していけます。
その方法は本書で公開してきたので、しっかりと実践していくことで心は自由になっていきます。一歩ずつ進みましょう。
欲や怒り、妄想に満ちた世界
ちょっとスケールを大きくして、陰謀論ではないけどこの世界を動かす「巨大な業」についても触れておきます。
政治や経済、文化なども、もともとすべては心から始まっています。だとすれば、世界を動かすのは人間の心に潜む業です。
例えば貧困や格差が生じるのも、富の再分配が機能していないから。一部の人間たちの欲によって、富が独占されているともいえます。
貪欲という業が、社会全体の不幸の総量を増やしているわけです。
また人間は昔から妄想に縛りつけられてきました。「自分はこう思う・これを信じる」という妄想で自己を正当化し、他者を否定し続けてきました。
他人が苦しむことになったとしても、自身の承認欲を満たすことを優先してしまいます。
こんな世界でも生きていく
ブッダも、執着に囚われた人たちに道を伝えることを躊躇したというエピソードがあります。
自分が悟ったのはいいけど、それを人に伝えたところでどうせわかってもらえない。なら1人静かに瞑想してたほうがいいや。みたいな感じ。
時代を超えて人々の心に巣くう業はますます力を増している感があります。
それでも僕たちはこの世界で生きていかなければなりません。
【記事14に続く】
草薙龍瞬著『こころを洗う技術 思考がクリアになれば人生は思いのまま』
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