パウロ・コエーリョ著の小説『アルケミスト 夢を旅した少年』。
前回の記事からの続きです。
少年はオアシスに軍隊が攻めてくるヴィジョンを見て、らくだ使いに相談しました。
らくだ使いは自分が過去、千里眼と呼ばれる男に言われたことを思い出します。
千里眼いわく、神様はたまに未来の映像を見せて見せてくれるとのこと。
そして神様が見せる未来というのは、変えられるように書かれているものだということです。
なのでらくだ使いは少年に、オアシスの族長に会って話をするよう勧めるのでした。
オアシスの族長に前兆を知らせる
少年は族長に会いに、オアシスの中央にある大きなテントへ行きます。
入り口で何時間も待たされてようやくテントの中に入ると、美しいカーペットなど豪華なものでいっぱいの広い空間に、八人の族長らしき人が座っていました。
「前兆のことを話すこの見知らぬ者は何者か?」と族長の1人が聞くので、少年は私ですと答え、自分が見たことを話します。
なぜ少年のようなよそ者に未来が見えるのか、そもそもオアシスが襲撃されるはずがない、などと族長どうしで議論がされました。
彼らの言葉はアラビア語の方言で、少年には何言ってるかわからなかったので、そっと帰ろうとしたけどやっぱり見張りに止められます。
少年は嫌な予感がして怖くなりますが、族長たちのトップと思しき長老がかすかに笑みを浮かべ、とたんにテント内の空気が平和になったのを感じ取りました。
長老の出した結論
その長老は少年にも理解できる方言で淡々と話し始めます。
2000年前にヨセフという男の見た夢が、エジプトを飢饉から救い、彼もまたよそ者だったということ。
そして自分たちを守ってきたしきたりの中には、砂漠のメッセージを信じるべきだ、というものもあるということです。
長老は以下のような結論を出します。
明日、オアシスの「武器を保有してはならない」という協定を一時中断し、丸一日見張りを立てて敵を警戒する。
敵が十名死ぬごとに少年に金貨1枚の報酬を出すが、もし敵が来なかった場合、使われなかった武器は少年に対して使われることになる。
つまり、明日もし何事もなかった場合、少年は処刑されるということです。
明日死ぬとしても後悔はない
テントから解放された少年は気が動転していはいたものの、自分がメッセンジャーとして族長に知らせを届けたことに後悔はしていません。
「マクトゥーブ」という一言が示す通り、もしも明日死ぬことになったとしても、運命として受け入れる気持ちになっていました。
海を渡ってから今日まで精一杯生きてきたし、ファティマにも出会えたし、もう悔いはないのでした。
そこで突然、かみなりのような音と同時に少年は吹き飛ばされます。
見てみると馬にまたがった黒ずくめの男がいて、彼は巨大な剣を抜いて少年に「誰がタカの飛び方の意味を読んだのだ?」と大声でどなります。
少年はビビりながらも「それは私です」と頭を低くして答えるのでした。
黒ずくめの男に殺されそう
黒ずくめの男は剣の先をゆっくりと少年のひたいに当て、一すじの血がひたいからしたたります。
男も少年も微動だにせず、少年は自分がこれから「大いなる魂」の一部になると思い、逃げようという気にもなりません。
男は剣を突きつけたまま、再び少年に、なぜ鳥の飛ぶ様を読んだのか問います。
「鳥が僕に伝えたがっていたことを読んだだけです」と少年は答えました。
男が剣を引き、「何かがすでに書かれている時、それを変えるすべはない」と言うと少年は、
「僕が見たのは軍隊だけです。戦いの結果は見ていません」と答えました。
その男、錬金術師
男はその答えに満足した様子で、剣をさやに収め、「おまえの勇気をためさなくてはならなかったのだ」と言います。
勇気こそ、大いなることばを理解するために最も重要な資質だからです。
その男は少年が考えていたような敵ではないようで、こんな遠くまできたのにあきらめてはならぬぞ、と続けます。
彼の言い回しは少年に、年老いた王様のことを思い出させました。
そしてもし明日の日没になっても少年の頭が肩の上にまだ乗っていたら、わしを探しにくるがよい、とその男は言い、去っていきました。
少年は錬金術師に会ったのでした。
【記事16に続く】
パウロ・コエーリョ著『アルケミスト 夢を旅した少年』
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