グーグルのマインドフルネス本『サーチ・インサイド・ユアセルフ』以下、SIY。
前回の記事からの続きです。
相手から最善のものを引き出すためには、共感するほかに「ほめる」という手もあります。
その場合、まず本心からほめるのが大切で、さらに上手なほめ方を身につけなければなりません。
プロセスをほめたほうがいい
小学5年生の子どもたちをほめる実験で、ある問題を解いてもらい、片方のグループには「頭がいいんだね」とほめ、もう片方には「一生懸命やったんだね」とほめました。
その結果「一生懸命やったんだね」とプロセスをほめたグループのほうが、もっと難しい問題に取り組んだときの成績がよかったそうです。
つまり「プロセス称賛」をされると、人間の才能は熱意や努力で伸ばせるのだという「成長志向」の姿勢が強まるのです。
人とのあいだの相互作用を理解する
一対一での共感技能を学んだら、その延長線上に、組織の情動の流れと力関係を読む能力があります。
この能力は「政治的意識」と呼ばれるもので、共感を対人関係のレベルから組織のレベルへと一般化したものです。
人々を理解し、そのあいだの相互作用を理解すれば、組織全体が理解できるのです。
このような意識を深めるためのエクササイズを以下に紹介します。
自分の現在や過去における、誰かと対立したり意見が分かれたりした状況を思い浮かべてください。
まずは、自分が100パーセント正しいという前提でその状況を説明してください。
(話す相手がいなければ、紙に書き出します)
今度は、相手が100パーセント正しいのだという前提でその状況を説明してみましょう。
どちらかが間違っているわけではない
このエクササイズによって「対立は一方が間違っているから起こるとはかぎらない」ということがわかります。
両者ともに正しいのに対立が起こる可能性は十分ありうるのです。
たとえばある製品に対し、品質を犠牲にして納期を守るべきだと言う人と、納期が遅れてでも完成度を優先する人がいたら、どちらにも言い分があるということ。
この場合、お互いに暗黙の優先順位を理解することで解決するかもしれません。
異なる視点を客観的に理解できるようになれば、政治的意識の精度が上がっていきます。
マインドフルネスで土台を築く
共感の能力は練習で伸ばすことができ、その練習の大半はマインドフルネスに関わっています。
優しさという心の習慣がつけば、他人に受け入れてもらいやすくなり、あなたも他人を受け入れやすくなります。
たとえ意見が食い違ったとしても、相手の立場を理解できるくらいに心を開けるようになるのです。
マインドフルネスをしきりに練習することで、しっかりした土台を築けます。
上に立つ人ほど愛情が強い
管理職として優秀な人ほど「人を愛したい、人から愛されたい」という両方の願望が強いそうです。
物事を成し遂げるには、冷徹な人間のように振る舞わなけれならないと思われがちなもの。
でも実際は、人に好かれることが最も効果的な方法なのかもしれません。
アメリカ海軍でも、有能な指揮官たちはEQが高く、人から好かれているという研究結果があります。
情動的技能を実社会で応用する
「優しい気持ち」「開かれた心」「適切な社会的技能」があれば、難しい状況でも乗り越えることができます。
人間関係が険悪になりかねない状況でも、そこが友情の始まりにもなりうるのです。
これは、本から学んできた情動的技能を実社会で応用することでもあります。
逆に、実社会こそが情動的な技能を磨くための打ってつけの場所だといえるのかもしれません。
【記事23に続く】
チャディー・メン・タン著『サーチ・インサイド・ユアセルフ』
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