中村天風の講演録『君に成功を贈る』。
前回の記事では「強い命をつくる」の章を要約しました。
今回は「価値高く生きる」の章をまとめます。
同じ話でも受け取り方が違う
植木に肥料を与えるのにタイミングがあるように、人生に関する話を聴くタイミングというものも、人それぞれですが存在します。
同じ集まりで同じ話を聴いた後、抜きん出て偉くなる人もいれば、大して成長しない人もいます。
その違いは同じ話の受け取り方にあります。
天風会の会員で松下幸之助氏がいますが、若いときの松下氏は話の聴き方が一生懸命であり、そのぶん受け取る量も他人以上だったのです。
恋人の言うことを聴くような気持ちで
どんなに文化が発達しても、人生を二度三度と繰り返すことはできないし、今日のこの瞬間は永久に帰ってきません。
人間は死ぬために生まれてきたといってもいいほどで、だからこそ真剣に自分の人生を価値高く活かさねばなりません。
このような大切な話は、はっきりした気持ちで聴いてください。
わかりやすく言うと、恋人の言うことを聴くような気持ちで聴くのです。
そうすれば手帳やノートにメモを取らずとも、重要なことは覚えられるようになります。
きれいなものをきれいだと感じるのは心
自分の人生を価値高く活かすために、物質的に恵まれている必要はありません。
また、生命についても肉体さえ大事にしていればいいと考えている人が多いでしょう。
現代人は心の重大性を正しく認識していないものです。
たいてい朝に目が覚めたとき、まず自分の肉体のことを考えます。
しかしまず考えるべきは心のことです。嬉しいのも楽しいのも、つらいのも悲しいのもみんな心の働きです。
月を見ても、花を見ても、きれいだと感動するのは心です。
人間に心がなかったら、力が肉体に与えられていようとも、庭の石ころと同じです。
今から幸福になればいい
天風氏自身も真剣に心について考え始めたのは、40才を過ぎた頃からでした。
軍事探偵時代の若い頃は、戦争中で任務を遂行する使命感があったのもあり、無理をしても大丈夫でした。
しかし戦争が終わると病に侵され、急に転んだ者があわてて杖を探すように、心の力の重大性を次第に悟れてきたのです。
このように心の研究をして、天風氏は「心が積極的な人に健康や幸福が訪れる」という結論に至っています。
人間に年齢は関係はないので、70代、80代になっても情熱を燃やしてください。
明日に死を迎えるとしても、今日から幸福になっても遅くないのです。
ひとかどの人物はみんな心が積極的
心がネガティブになってしまうと、健康はもちろんのこと運命もほころびてしまいます。
「カニは甲羅に似せて穴を掘る」ということわざがあるように、人間は心に描いたものを現実化させます。
心のもち方で運命を決定した人として、東洋では豊臣秀吉が有名です。
今のホームレス以下の生活をしていた百姓の出身から天下を取るに至ります。
母親の影響も大きく、幼い頃の秀吉は「お前はお日様の生まれかわりなんだよ」と母親から言われて、彼もそう信じて育ったそうです。
西洋の有名人でいえばナポレオンで、「余の辞書に不可能はない」という言葉でもって数々の戦いに勝利しました。
学問も経験もお金も、人を幸福にはしない
人間の生命を生かしているのは神経系統であり、その働きは心のもち方に左右されます。
証拠として、神経過敏な人は病気になりやすく、しかも治りにくい。
反対に心をポジティブにしている人は、医者がサジを投げても奇跡的な回復力を見せたりします。
人間の生きる力というのは6つあり「体力、胆力、判断力、精力、能力」です。
豊臣秀吉やナポレオンは自分の神経系統の働きを引き上げ、これら6つの力をフル活用したわけです。
今どきの人間は、たくさん勉強したり、経験を豊富にしたり、もしくは金持ちになれば幸せになれると思っていますが、そうはいきません。
まず心を積極的にしないと、人間は価値高く生きることはできないのです。
心を鍛えて神経系統の働きを強め、6つの力をつくっていかなければなりません。
幸運は自分で呼びよせるもの
天風氏は70才近くになるまで、会員の修練会でのマラソン大会もぶっちぎりでトップを駆け抜けていたそうです。
天風氏にしてみれば2時間走り続けるよりも2時間講演するほうがよほど大変ということ。
というのも話すときは吐く息を長く、吸う息を短くする必要があるからです。
90才になっても講演を続けていられるのは、やはり心を積極的に保ち続けられているから。
心が弱くなると、上手くいかないことをなんでも他人や環境のせいにしてしまいがちです。
幸福も健康も成功も、僕たち自身のなかに存在しています。
それらを積極的な心によって呼びよせなければなりません。
特別な勉強をしたり、薬を飲んだりしなくても、このような話を聞いた瞬間から人生を幸福に満ちたものにできるのです。
(次の記事に続く)
『君に成功を贈る』中村天風
コメント