中村天風の講演録『君に成功を贈る』。
前回の記事では「価値高く生きる」の章をまとめました。
今回は「思い通りの人生に生きる」の章について。
実行にうつすことで行間を読む
どんなに良い方法を理解したとしても、それを現実化しないことには空中に楼閣を描く結果となります。
「実行にうつせ」という言葉の中には深い意味が含まれていることに気づいてください。
「行間を読め」という言葉があるように、文字の影に隠れたほんとうの意味をくみとることが大切です。
結局は実行にうつすことで言葉を超えた内容が理解できるようになります。
理想的な人生にするために
どんなに欲のない人間でも、理想的な思い通りの人生を生きたいと思うはずです。
若いあいだは自分の人生は長いものだと考えがちですが、生きている以上はいつか必ず死ななければなりません。
自分の生命は今生この時かぎりだと考えたら、価値高い状態で活かすのが当然だと気づくでしょう。
人生とひとくちに言っても、これを立体的に考えると油断もスキもありません。
優れた人間になりたいという欲望を現実化するには、必要なプロセスを知っていなければならないのです。
蒔いた通りに花が咲く
天地自然のもの以外のすべては、人間の思考によって生み出されたものです。
太古の昔から人間が心の中で理想としたものが現実化され、今のこの世の中が創られています。
人間にだけこのような不思議な力が与えられているわけです。
「こんな不運な状況を自分は考えてない」と思うかもしれませんが、真理は常に公平で厳格です。
自分が知る知らないに関わらず、蒔いたとおりに花が咲くのです。
だから理想的に生きたいのであれば「こうなりたいな」と思うだけでなく、もうそうなった状態を聖火のごとく心に描き続けましょう。
とにかく大きなものを神秘に思う気持ち
悲観や煩悶、取り越し苦労などの消極的な考え方に注意してください。
この世は消極的暗示に満ちていますから、それらから身を守るようにしましょう。
今の時代になっても、神や仏を気にかけ、縁起かつぎにこだわる人がいますが、それこそ消極的な暗示です。
科学が発展していなかった時代は、森羅万象の変化変転をみんな不思議に思っていました。
今でも星空を見上げたら何ともいえない神秘感につつまれるはずです。
これは学問があってもなくても人間の持っている自然の心に与えられた働きです。
世界とか宇宙とか、なんだか知らないけど「とにかく大きいんだな」と思う心です。
ずっと昔の人は、このような偉大なものを擬人化して、ゴッドとかアラーとか、如来とか天之御中主とか名付けていました。
宇宙全体を支配している力に感謝する
1900年にドイツのプランク博士がプランク定数を発表し、「この世のすべては素粒子からできている」と説きました。
この世の形あるものはすべて、素粒子の組み合わせの違いの結果として生じています。
神や仏という言葉を用いるのであれば、素粒子そのものをつくった目に見えない力がそうであると言えます。
考えるべきなのは、このような目に見えない力、エネルギーに感謝し、尊敬すべきだということです。
宇宙全体を支配しているこの力に人格のようなものを与えて、それにすがるのではなく、ただ感激し尊敬すればいいのです。
「天は自ら助くるものを助く」です。
身に病あれど心まで病ませない
「神や仏に救われたい」という考えをもっているかぎりは、思い通りに生きることなどできません。
自分の人生をほんとうに守っていくためには、いかなる場合でも心の態度を積極的にすることです。
「たとえ身に病あれど心まで病ませない、たとえ運命に非なるものあれど心まで悩ませない」ということです。
心の力で運命をも支配下におくことができます。
怒ることがあるから怒る、悲しむことがあるから悲しむ、というのを当たり前と思ってはいけません。
心配事があるからといって心配しても、心配事が余計に増えるだけなのです。
病気のときは「治っても治らなくてもいつかは死ぬ。生きている今日を楽しく生きよう」という心構えでやっていきましょう。
人間は自分の力で生きているわけではない
心の持ち方が生命力に大きく影響するという事実は、理知教養ある人にも意外と知られていません。
人間は自力ではなく他力、すなわち宇宙エネルギーによって生かされています。
この宇宙エネルギーは空気、食物、飲み水、太陽光線、土の中に含まれ、それを僕たちの命が受け入れることによって生きているのです。
ただあるがままに生きていれば、神経系統は宇宙エネルギーを無条件で受け入れ、僕たちの生命を微妙な働きで保ってくれます。
消極的な心の態度というのは、あるがままの働きを妨害してしまうのです。
ショックや衝動は、心ではなく腹で受け止めよう(クンバハカ)
すべての感情や感覚の、衝動や刺激をこれまでは心で受け止めていたと思いますが、今度からは腹で受けるようにしてください。
衝動や刺激を感じたら、腹に力を入れ、お尻の穴をしめ、肩の力を抜く。
この三つを同時に行うのです(これをクンバハカといいます)。
肩と肛門と腹との三位一体で、外部からどんなにショックを与えられても、心に少しも変化を起こさなくなります。
怒りそうになったらお尻の穴をキュッ、悲しくなったらキュッ、これで大丈夫です。
でも恋人と会ってるときは、愛も感動もなくなっちゃうのでやってはいけません。
人間としての可能性
生命エネルギーの受け入れ体勢を保ち、人間としての価値を発揮するため、どんなことがあっても心の態度を崩さないようにしましょう。
人間は進歩と向上があってこそ生きがいを感じるのです。
どんなに世の中が複雑混沌としていても、心を尊く清くしていれば、ほんとうに幸福に生きていけます。
(次の記事に続く)
『君に成功を贈る』中村天風
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