前回の記事からの続きです。
読者に「これは他人事ではないぞ」と思わせるのことで、自分の文章に引き込むことができます。
そのために「仮説を立てて読者とともに検証する」という方法があります。
要するに「自分の考えを先にもってきて、それについて一緒に考えよう」という構成にするのです。
その構成は起承転結ならぬ「起転承結」であり、早い段階で読者に「なんだと?」と思わせます。
そして、理路整然とした正しい文だけでなく、あえて「寄り道」を入れることで、読者に自分で考えてもらうスキをつくりましょう。
それぞれについてまとめていきます。
仮説・検証で読者をプレーヤーにする
小説などのフィクションであれば、登場人物の状況や心境などが他人事ではなくなっていき、読者を巻き込んでいけます。
しかしノンフィクションや実務的な文章では、書き手の一方通行になりがちです。
そこに書き手の「仮説」を提示することで、では検証していきましょうとなり、ミステリーの要素が加わります。
読者も他人事ではなくなり、ともに結論を導き出すゲームのプレーヤーに変わるわけです。
そのためには、どんな文章の構成にすればよいのでしょうか?
起転承結で興味をひく
読者を巻き込むための構成として、起承転結ではなく、早めに「転」を持ってくる「起転承結」にします。
物語のように、話の後半に「転」を持ってきてしまうと、実用的な文章では逆に混乱を招きがちです。
なので、早い段階で読者に「あれ? なんで?」と思わせ、読者の興味をひきつけるようにします。
具体例としては以下のような感じです。
- 起……本は書斎やリビングで読まれることが多い
- 転……僕は外で読むのが一番いいと思う(仮説・主張)
- 承……(理由や客観的事実など、読者の共感を呼ぶ内容)
- 結……だから、防水で丈夫な電子書籍端末はとても便利だ
冒頭に「真逆の一般論」をもってくる
このような構成を考えるにあたって、「転」よりも「起」の部分が重要になってきます。
なぜなら冒頭の一般論の書き方によっては、次の「転」が機能しなくなるからです。
たとえば「インターネットは素晴らしい」という主張をしたいのであれば、
「インターネットは恐ろしいと思われている。しかし実際は〜」
という流れにしたほうがよく、そこを「インターネットは世界中で利用されている」などで始めると、文章に起伏がなくなってしまいます。
あえて真逆の前提を冒頭で述べたほうが、次にくる自分の仮説・主張が輝くのです。
「読者はなにも知らない」と想定して書く
また、書き手として頭に入れておいてほしいのが「すべての読者は素人だ」という言葉です。
これは決して読者をナメているのではなく、なにも知らない人に向けて書いているのだ、という意識を忘れないでほしいということ。
あなたの主張を正確に理解しているのはあなただけであり、すべての読者は「それを知らない素人」なのです。
傲慢な態度のように聞こえるかもしれませんが、むしろ読者と誠実に向かい合うために、そういう意識を持つようにします。
試行錯誤の部分をあえて書く
寄り道もなにもない、理路整然としすぎた文章というのは面白みに欠けます。
なぜなら文章が自己完結してしまって、読者が参加するスキがないからです。
正しいだけの文章は、その正しさゆえに伝わらなくなってしまいます。
なので、自分が結論を導き出すまでに通った「ムダな回り道」も、あえて試行錯誤の過程として書くのです。
(要約記事を書いている自分としては、なるべく結論だけ書きたいので、これまた耳の痛い話です)
こんなふうに余計と思える部分も、読者が納得していくための助けになります。
もちろん、すべての過程を再現する必要はありません。
しかるべきタイミングで結論にたどり着けば、読者も納得してくれるのです。
【記事15に続く】
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