古賀史健著『文章講義』要約#04 目指すべきは美文ではなく正文

読書

20歳の自分に受けさせたい文章講義

前回の記事からの続きです。

文体の正体は「リズム」であり、リズムを決定づけているのは「論理展開」です。

そして論理的な整合性は「接続詞」によって保たれるということを、前回の記事で説明しました。

ここで、まだなんとなく腑に落ちない読者に向かって、著者の古賀氏は「美しい文章」など目指さなくていいんだよと言ってくれるのです。

美しさよりも正しさが大事

文章本来の目的は「伝えること」なので、美しさよりも「正しさ」のほうが大事です。

また「美」という概念はどこまでも主観的であり、どんな表現を美しいと感じるかは人によって異なるものです。

なので美しさを意識しすぎると独りよがりな文章になり、結果として支離滅裂な内容になりがちです。

一方で「正しさ」を意識することは、客観的な目線を意識することにつながります。

別に、無個性で画一的な「正解文」を目指せといっているわけではありません。

むしろ著者は、いかなる種類の文章にも正解などないと考えます。

しかし同時に、あからさまな「不正解」は存在するとしています。

それは論理破綻していて「伝えるべきこと」が伝わらない文章のことです。

伝えるべきことを伝えるために

僕たちにとっての「伝えるべきこと」は、第一に「自分の意見」です。

大切なのは「自分の意見」というのが完全な主観であり、感情だということ。

文章という声も表情もないツールを使って自分の感情を伝えるためには、論理を使わなければなりません。

そして主観を語るために、客観を保つことが必要なのです。

ローリング・ストーンズのハプニング映像

感情と論理の関係を考えるために、ローリング・ストーンズのライブでの面白いエピソードを紹介します。

その日のライブでの最終曲は『サティスファクション』と決まっていたはずなのに、ギターのキース・リチャーズは勘違いして『イッツ・オンリー・ロックンロール』のリフを弾き始めました。

しかしヴォーカルのミック・ジャガーは強引に『サティスファクション』を歌い始めたのです。

困ったのはドラムのチャーリー・ワッツでしたが、結局彼はうまく調整して『サティスファクション』を選択します。

こうしてギターのキースも、しぶしぶこの曲のほうの演奏に切り替えたという話です。

進行を決めるのはリズム隊

ミック・ジャガーもキース・リチャーズも「ロック界の伝説」と呼ばれるほどのカリスマ的存在です。

それでも、バンドの進行を決めるのはドラムであり、リズム隊だということ。

文章に置き換えると、ヴォーカルやギターが語彙力や表現力だとしたら、ドラムやベースなどリズム隊が論理の土台になります。

本当に曲を聴いてもらいたいなら(文章を読んでもらいたいなら)、まずは土台となるリズムを固める必要があるのです。

なかなか重要な「視覚的リズム」

文章のリズムに関するアドバイスで、もっとも多いのが「自分の書いた文章を音読しなさい」という言葉です。

音読は確かによい方法なのですが、忘れてはならないのは「読者は文章を眼で読んでいる」という事実です。

なので書く側も、聴覚的なリズムを気にする前に、「視覚的リズム」を考えなければならないのです。

本をパッと開いたときや、ネットで記事をチラ見したとき、人は一瞬で「なんか読みやすそう」「なんか読みづらそう」を判断しています。

この判断に関わる視覚的リズムというのは、以下の3つによって生まれると考えてください。

  • 句読点の打ち方
  • 改行のタイミング
  • 漢字とひらがなのバランス

(先の記事で「本質的ではない」と散々ディスった要素ですが、やはりそれなりに大切なのです)

記事05に続く

20歳の自分に受けさせたい文章講義

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