10分間瞑想とマインドフルネスの本『頭をからっぽにするレッスン』
前回の記事からの続きです。
今回は1〜2分ほどの簡単なエクササイズを紹介していきます。
その前に著者のプディコム氏がインドで出会った、ジョシという男性とのエピソードに触れておきます。
ジョシさんの話
ジョシさんは奥さんと子どもたちとともに、裕福ではないけれど幸せに暮らしていました。
けれど4人目の子どもが生まれた直後、その子と奥さんが乗っていた車が交通事故に遭い、奥さんの両親も含めて全員亡くなってしまいました。
ジョシさんは現実と向き合いたくなかったけれど、3人の子どものために悲しみを乗り越え、精一杯の愛情を注ぎました。
それが数ヶ月後、村で疫病が流行し、彼の母親と3人の子どもが病に倒れ、4人が亡くなります。
残る肉親は彼の父親だけになったのですが、その父親が家の中に一人でいるときに家が全焼したそうです。
(それが事故だったのか、父親が耐えきれなかったのかは不明とのこと)
悲しみは消えないが受け止め方が変わった
プディコム氏はこのジョシさんの話を聞いて、自分はなんてささいなことに不満を抱いたり、文句を言ったりしてきたのだろう、と恥ずかしくなりました。
目の前にいるジョシさんは想像を絶する苦しみを味わいながら、こんなに落ち着いているのに。
ジョシさんはすべてを失い、人生への考えを変えざるをえなくなり、最終的に瞑想所で暮らしていました。
彼いわく、過去の出来事への感じ方は変わらないけれど、それらを感じる体験が変わったとのこと。
大きな喪失感や悲しみを感じることはまだあるけど、その受け止め方が変わりました。
それらの感情の下に、安らぎや落ち着きのある場所を見つけた、と言うのです。
瞑想が持続的な幸福感をもたらす
ジョシさんほどじゃないにしても、僕たちは必ず人生の試練にぶつかります。
「もしもあんなことが起こらなければ」といったことを、瞑想が変えることはできません。
でも、この状況をマインドフルネスで乗り切ることはできます。
世界の見方を変えれば、実質的に自分のまわりの世界が変わるからです。
瞑想するために人生の夢や目標を諦めなければならない、なんてことはなく、むしろ瞑想は目標を明確化し後押ししてくれます。
ただ、瞑想していれば夢や目標に頼らなくても持続的な幸福感を得られ、「からっぽ」を感じられるようになるのです。
何もしないエクササイズ
多くの人にとって何もしない時間をすごすというのは、よくて退屈、悪ければすごく恐ろしいことに思えます。
僕たちは「考える」ことも含め、常に「何かをする」ことに取り憑かれていて、心を休めるヒマをつくろうとしません。
以下に「何もしない」というエクササイズを紹介します。
- 今座っている場所から動かず、読んでいる本やスマホを膝の上におく。
- 軽く目を閉じ、1〜2分そのままでいる。
- いろんな考えが頭に浮かぶかもしれないけれど、浮かんでは消えるにまかせる。
このエクササイズによって、自分には常に何かをしている癖や、そうしたい思いがあることに気づけます。
何かをすることによる幸福は一時的
音楽を聴いたり美味しいものを食べたりと、何かをするのというのが悪いわけではなく、むしろ楽しむべきです。
ただしこれらは、一時的な幸福をもたらすものの、持続的な「からっぽ」の状態は生み出さないと知っておいてください。
たとえばテレビで面白い番組を観ることで、悩み事からつかのま解放されたように感じても、番組が終わったとたんに悩みがよみがえる、なんてことはよくあります。
その悩みはずっとそこにあったけど、気をそらすものがなくなり、その存在に気づいたというだけです。
五感を意識する
以下に「五感を意識する」というエクササイズを紹介します。
- 今いる場所に座ったまま、読んでいる本やスマホを膝におく。
- 音もしくは視覚など、五感のひとつに軽く意識を集中させる。
- 2分間ほど、選んだ対象にゆったりと意識を向け続ける。
やってみて、すぐに気がそれてしまったとしてもそれが普通であり、1分間でも対象への集中を保てればたいしたものです。
ライフスタイルを変えなくていい
僕たちは少しでも退屈を感じたら、スマホを開くなどして、頭をいっぱいにしてしまいがちです。
データの洪水に溺れそうな気がしている人は、けっこう多いのです。
プディコム氏も僧をやってた頃なら「スマホの電源切れば?」ですませていたでしょうが、下界に戻った今では情報と上手につきあう方法をみんなに教えています。
そのためには何かを諦める必要もなければ、ライフスタイルを大きく変える必要もありません。
マインドフルネスは、同じ生活をしたまま、その体験自体を変えるものです。
心の底に充実感をもちつつ、あるがままに生きる道を見つけることなのです。
心をトレーニングし「からっぽ」になる
プディコム氏のクリニックにやってくる人の大部分は、もう少し楽に生きる方法を見つけたいと思っている普通の人々です。
自分自身や他人の心を傷つけるような行動をしてしまう人々の多くは、日々もう少しだけ頭をからっぽにできたらと望んでいます。
ストレスは僕たちに後々に、言わなければよかったと思うことを言わせ、しなければよかったと思うことをさせるもの。
もちろん、適度なストレスや困難があるからこそ充実感を味わえたりはするものの、それらがよくないストレスに波及することが多いのです。
そんなときこそ、心をトレーニングし、いつでも心の奥底にある充実感・幸福感に触れられるようにしておきましょう。
それこそが「からっぽ」をつくるということです。
自分のためだけではない瞑想
マインドフルネスのトレーニングをすることで、他人との関わりも自然とポジティブになります。
瞑想は東洋から西洋に伝わったときに「自分のためだけのもの」になってしまいましたが、本来はそうではなかったのです。
他の人の幸福に目を向ければ、自分の中の「からっぽ」が広がります。
すると、自分が相手を不快にさせていることに気づいたり、相手が自分を不快にさせる原因にも気づきやすくなります。
結果として、他者との関係が本当の意味で変わり始めることにも気づくはず。
瞑想の利用法
瞑想の利用法のひとつは、プディコム氏がアスピリン(鎮痛剤)式と呼ぶアプローチです。
これはストレスがたまるたびに瞑想でリフレッシュするというもので、悪い方法ではありません。
二番目のアプローチは、瞑想時の心の状態を、残りの生活にも取り入れるというもの。
10分間の瞑想でマインドフルネスの感覚をつかみ、その感覚のまま1日を過ごすことができるのです。
【記事04に続く】
アンディ・プディコム著『頭をからっぽにするレッスン』
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