1987年公開の映画『フルメタル・ジャケット』
この記事は、まだ観たことがない人でも安心して読める内容になっています。
『2001年宇宙の旅』および『シャイニング』を最近観て、「キューブリック監督すごい」となっている勢いで観てみました。
フルメタル・ジャケットとは「完全被甲弾」のこと。
今まで僕が観てきたいわゆる「戦争映画」のなかでも、トップクラスで面白かったです。
映画自体は大きく「訓練生編」と「ベトナム戦争編」の二部構成となっています。
この監督特有のノリで淡々と進むので、ここで少し予習しておくことをおすすめします。
ほほえみデブ
アメリカの海兵隊に入隊し、有無を言わさず丸坊主にされていく青年たちの映像からスタートします。
こうして見ると、髪の毛というのは個性の象徴なんだなとしみじみ思いました。
そしてハートマン教官は、入隊したての訓練生たちにありとあらゆる罵詈雑言をぶつけます。
とはいえ映画として観ている側では、そこまで深刻な気持ちにはならず、むしろ独特な空気でシュールな感じになります。
ハートマン教官はここで何人かの訓練生たちにあだ名をつけるのですが、レナードというどんくさい青年を「ほほえみデブ」と呼ぶわけです。
(この「ほほえみデブ」が僕にとってツボで、当人には申し訳ないけど笑うしかありませんでした)
主人公ジョーカー
ハートマン教官は確かに言葉が汚く理不尽でもありますが、よく観察している感心する一面もちらほらあります。
僕が印象に残っている言葉としては「私への憎しみを力に変えろ」とか、「私は人種差別はしない。なぜならお前らは総じてクズだからだ」など。
そして、ほほえみデブ(レナード)がどんくさくて周りについていけないの見て、面倒見のよさそうなジョーカーを隣につけます。
ちなみに本作で語り手として物語を進めるのはこのジョーカー。メガネでおとなしそうだけど芯の強い青年です。
彼はレナードにあらゆる手取り足取り教えてあげるのですが、それでもレナードはみんなの足を引っ張ります。
追い込まれるとよからぬ行動に
レナードがへまをすると連帯責任として他の訓練生たちが腕立てなどをさせられるので、みんなの鬱憤がたまっていきます。
ある夜、その怒りをぶつける形で、寝ているレナードを羽交締めにして何人かで殴りました。
ジョーカーも葛藤しつつ、結局それに参加してしまい、罪悪感にさいなまれます。
ストレスフルな状態が続くと、どんな人間でもよからぬ行動に駆り立てられてしまうわけです。
その後、ほほえみデブのレナードは射撃の才能を発揮して、ハートマン教官にも認めてもらえます。
でも精神的にはやはり追い込まれていて、自分のライフルに話しかけながら手入れするレナードを見てジョーカーは心配するのでした。
そしてベトナムへ
第二部の「ベトナム戦争編」についても少しだけ触れておきます。
ジョーカーは報道部員として活躍していました。
ヘルメットに「BORN TO KILL」と書かれているのに対し、胸に平和マークのバッジを付けているのは彼なりの自己表現だと思います。
「訓練生編」と比べてガラっと雰囲気が変わりますが、一貫しているメッセージは「極限状態において人は変わってしまう」ということ。
女子供も殺したことがあるという兵士をインタビューするジョーカーが「よくそんなことができるな」と非難するシーンが出てきますが、これも立派な伏線になっていました。
終わりに
あまり映画撮影のテクニックとかはよくわからないのですが、思ったのは「動」と「静」がしっかりしているということ。
「反戦映画」と言われることが多い本作ですが、キューブリック監督は戦争を否定もしなければ肯定もせず、あくまでリアルさを追求していると僕は感じました。
以上、なんだかんだで観てよかったと思える映画でした。
気になる方はAmazonプライムやU-NEXTなどでぜひ。
キューブリック監督『フルメタル・ジャケット』
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