パウロ・コエーリョ著の小説『アルケミスト 夢を旅した少年』。
前回の記事からの続きです。
錬金術師は少年が知るべきこととして、「夢が実現する前に、大いなる魂はこれまで学んだすべてのことをテストする」と教えます。
この予言めいた言葉の通り、これから少年にとって試練となる出来事が起こります。
自分の宝物を他人に話しても、めったに信じてもらえない
予兆として、武装した男が3人、少年と錬金術師のところに近づいてきて、何をしているのかたずねてきます。
そして持ち物検査をされ、彼らは錬金術師の持ち物から黄色いガラス玉と液体の入ったフラスコを見つけます。
錬金術師は隠そうともせず「これは賢者の石と不老不死の霊薬だ」と答えるので、少年は彼がおかしくなったんじゃないかと疑います。
しかし武装したアラブ人たちはそれをジョークとみなし笑って、二人に旅を続けることを許します。
アラブ人たちが去った後、錬金術師は少年にこう説明するのでした。
「おまえが自分の内にすばらしい宝物を持っていて、そのことを他の人に話したとしても、めったに信じてもらえないものなのだよ」
心を信頼するのはいいけれど
砂漠の旅が続くにつれて少年の心は静かになります。
少年と彼の心は友達になり、今やどちらも相手を裏切ることはできなくなりました。
彼の心は過去に少年を危険から守ったことを話してくれました。
少年が羊飼いだった頃に盗賊に命を狙われそうになりましたが、心の働きによって彼は体調不良で寝込み、盗賊に会わずにすんだのでした。
錬金術師が言うには、夢を実現しようとしている人に対して、心による助けが入るらしい。
だからといって今後、少年に危険なことが起こらないのかといえばそうでもなく、心はそのときできることを行うだけです。
後日少年は錬金術師に、心を信頼するのはいいが、危険な砂漠にいるということを忘れるな、と注意されます。
すべてはひとつだ、と少年は思いました。
そして砂漠がそれを証明するかのように、馬に乗った男が二人現れました。
目はその人の魂の強さを示す
これ以上進んではならぬ、と脅してくる男たちの目をまっすぐに見て、錬金術師は「私たちはそう遠くへはいきません」と言いました。
男たちはしばらく黙ったあと、行っていいと告げます。
少年は、錬金術師が眼力で男たちを支配していたことに気づいていました。
「目は、その人の魂の強さを示す」と錬金術師は言いました。
言われてみると少年は、さっき通り過ぎた野営地でも、かなり遠くにいる男たちのうちの一人が二人を見つめていたことを気づいていました。
きっと魂の強い男が一人いたということです。
宇宙にあるすべてのものは進化している
二人はピラミッドまであと二日のところまでたどり着きます。
少年は錬金術師に、別れる前に錬金術を教えてくださいと頼みます。
錬金術師は、大いなる魂とつながることならおまえはもう知っているよと答えます。
少年は、そうじゃなくて鉛とかを金に変える具体的な方法が知りたいんだと言いますが、錬金術師は砂漠のように黙ってしまいました。
しばらくした後の食事休憩のときに錬金術師は話し始めます(内容をかいつまんでいくと以下のようになります)。
宇宙にあるすべてのものは進化している。
そして金は最も進化した金属であり、その理由は彼とて知らないらしい。
人々は金を進化のシンボルとみなさず、争いのもとにしてしまった。
過去の錬金術師たちは、何かが進化するとき、まわりのすべてのものが進化することを理解した。
まれに準備のできた魂を持つ存在は、偶然に賢者の石にぶつかることもあった。
金にしか興味を持たないような者が秘密を発見することはなかった。
鉛や銅や鉄も、それぞれに果たすべき運命を持っている。
他の者の運命をじゃまする者が、自分の運命を発見することはない。
少年の身にせまる危険
その日の夕暮れ、少年の心が危険を知らせたかと思ったら、5分後にぞろぞろと男たちに遠くから囲まれます。
その数はまたたく間に100人になりました。
青い服を着てターバンをかぶった部族で、彼らの目は遠くからでも魂の強さを伝えていました。
そして彼らの目は死を物語っていました。
【記事21に続く】
パウロ・コエーリョ著『アルケミスト 夢を旅した少年』
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