パウロ・コエーリョ著の小説『アルケミスト 夢を旅した少年』。
前回の記事からの続きです。
錬金術師と二人で砂漠を旅する少年。
砂漠から学ぶためには砂漠に浸りきる必要があり、そのためには自分の心に耳を傾けるのだと教わります。
心の声を聞き続ける
自分の心に耳を傾けるのは容易なことではなく、少年の心は最初、いつも物語を語ろうとしていました。
別のときには悲しみを語り、宝物のことを心が話すときはどきどきしていました。
こんなふうに少年の心は静かになることがないので、少年は錬金術師に、なぜ心に耳を傾ける必要があるのか問います。
「おまえの心があるところが、おまえが宝物を見つける場所だからだ」と錬金術師は答えます。
でも僕の心はゆれ動いているのだと話すと、それはお前の心が生きている証拠だと返されます。
そして心が言わねばならないことを聞き続けるようアドバイスされるのでした。
僕の心は裏切り者
さらに三日間、二人は旅を続け、そのあいだにたくさんの武装した男たちとすれちがいます。
そのたびに少年の心は恐怖を語り、宝探しに失敗した男たちの物語を話すので、少年はうんざりして錬金術師に相談します。
「夢を追求していくと、おまえが今までに得たものをすべて失うかもしれないと、心は恐れているのだ」と錬金術師は答えます。
つまり心の自己防衛反応が働くということ。
心を黙らせることはできないので、あえて耳を傾けたほうがよいのです。
自分の心をよく知り、心が言わねばならないことを聞いていれば、不意の反逆を恐れずにすむのです。
夢を追求しているとき、心は傷つかない
砂漠を横断しながら、少年が自分の心の声を聞き続けていると、心のごまかしや企みに気づき、そのまま受け入れられるようになっていきました。
ある日、少年の心は以下のようなことを語りました。
- 私は人の心だから、夢を追求するのがこわい
- 自分はそれに値しないと感じている
- 夢を達成できなくて傷つくのがこわい
自分の心が言ったことについて錬金術師にまた相談してみると、
「傷つくのを恐れることは、実際に傷つくよりもつらいものだと、おまえの心に言ってやるがよい」
というアドバイスをもらえました。
夢を追求する一瞬一瞬が神との出会いであり、そのとき心は決して傷つきません。
大いなる魂からのことば
「僕が真剣に自分の宝物を探しているとき、毎日が輝いている」と、少年は自分の心に言います。
それは、一瞬一瞬が宝物を見つけるという夢の一部だと知っているから。
少年の心はその日の午後ずっと静かになり、少年はその夜ぐっすりと眠りました。
目覚めたとき、心は大いなる魂からのことばを少年に語ります。
幸せな人は自分のなかに神を持っていて、その幸せは砂漠の一粒の砂の中に見つけられる、と心は言いました。
話しかけるのをやめないでほしい
少年の心は話し続けます。
「すべての人には、その人を待っている宝物があるけど、誰もその宝物を探しに行きたがりません」
「ごくわずかの人しか、彼らのために用意された道を進もうとしません」
「ほとんどの人が世界を恐ろしい場所だと思い、そう思うことで実際に恐ろしい場所に変わってしまいます」
「自分の心に従わないばかりに、人が苦しむのを見たくないから、心はますます小声でささやくようになるのです」
少年は自分の心を理解し、心に対して、話しかけるのを決してやめないでねと頼みました。
そして自分が夢から遠くにそれた場合は警報を鳴らしてほしいと頼むのでした。
夜明け前が一番暗い
錬金術師は少年から一連の話を聞き、少年の心が大いなる魂に戻ったことを知ります。
今後も前兆に注意して進めば、心が宝物のありか示してくれると少年に言います。
そして少年が知らなければならないこと(前回の記事でもほのめかされていたこと)を説明しました。
それは、「夢が実現する前に、大いなる魂はこれまで学んだすべてのことをテストする」ということ。
これは悪意からではなく、少年が学んできたことを自分のものにできるようにするためです。
少年は「夜明けの直前に、最も暗い時間がくる」という、自分の国のことわざを思い出すのでした。
【記事20に続く】
パウロ・コエーリョ著『アルケミスト 夢を旅した少年』
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