パウロ・コエーリョ著の小説『アルケミスト 夢を旅した少年』。
前回の記事からの続きです。
錬金術師に出会い、彼のテントでタカやらぶどう酒やらをごちそうになった少年。
言われた通り、次の日に少年は自分のらくだを売って馬を買い、夜になって再び錬金術師のもとを訪れます。
穴からコブラを出してくる錬金術師
錬金術師と少年は各々自分の馬に乗り、月の光が照らす砂漠を進みます。
目的は砂漠の中で生命を見つけることで、錬金術師が言うにはそれが宝物を見つけるための前兆となるらしい。
「生命が生命を引きつけるものだ」という錬金術師の言葉を理解した少年は、馬の歩むスピードが落ちた辺りに何か生き物がいると判断します。
錬金術師は馬を降り、石の間の穴に手を突っ込み、必死の形相で穴の中にいる何かと格闘します。
彼がつかんで出してきたのは猛毒のコブラで、少年もびっくり。
錬金術師は三日月刀で地面に円を描き、そこに置かれたコブラはおとなしくなるのでした。
もしここで旅をやめた場合
少年が無事に砂漠で生命を見つけたということで、錬金術師が彼をピラミッドまで案内するための準備が整いました。
とはいえ少年のほうはファティマと別れたくないのもあり、踏ん切りがつかない様子。
もしもここで少年が旅を終えてピラミッドへ行かなかった場合、どんな未来になるのでしょうか。
錬金術師は以下のように、リアルにシミュレーションしてみせます。
少年はオアシスの相談役になり、ファティマと結婚してお金もあるので1年間は幸せに暮らす。
2年目のある日に少年は宝物のことを思い出し、前兆がしつこく語りかけるものの無視を続ける。
3年目に入っても前兆の語りかけは止まらず、少年が苦しむ様子を見てファティマは自分のせいだと悲しむ。
4年目のいつか、少年は前兆を読めなくなり、オアシスの相談役としての地位も解かれてしまう。
それでも彼は金持ちの商人になってはいるのですが、残りの人生をずっと「自分は運命を探究しなかった」と思いながら暮らすことになる。
以上のような未来になると錬金術師は言うのでした。
少年の決断
「男が自分の運命を追求するのを、愛は決して引き止めはしないということを、おまえは理解しなければいけない」
錬金術師の話を聞きながら、少年はクリスタル商人のことやイギリス人のこと、砂漠を信じている女性のことを思います。
「僕はあなたと一緒に行きます」と少年が覚悟を決めて言うと、彼の心はすぐに軽くなりました。
「明日、日の出の前に出発しよう」と錬金術師は答えるのでした。
出発することを彼女に伝える
少年は眠れぬ夜を過ごし、夜明けの2時間前、現地の若者に頼んでファティマを起こしてもらいます。
そしてファティマと少年の二人きりになるようセッティングしてもらい、若者に謝礼を渡しました。
「僕は遠くに行く」と少年はファティマに言い、話を続けようとすると、何も言わないでくださいとファティマにさえぎられます。
「人は愛されるから愛されるのです。愛に理由は必要ありません」
彼女がそう言った後、少年は自分が最初に夢を見て、砂漠を横断し、錬金術師を探す過程で彼女に出会ったという話をします。
「こうして全宇宙が共謀して、僕を助けて君に会わせたんだ。だから、僕は君を愛している」
ここで二人は初めてお互いに触れ、抱き合うのでした。
その日からの彼女にとって砂漠が意味するもの
ファティマは自分の父親も旅に出た後、無事に戻ってきたという話をします。
君のお父さんのように僕も戻ってくるからと少年が話すと、彼女の目は涙でいっぱいになりました。
「私は砂漠の女よ」と彼女は顔をそむけながら言いました。「でも、それ以上に私は女ですもの」
こうして彼女はテントに戻っていきました。
夜明けが過ぎてから彼女はいつも通りの仕事を始めますが、今までとはすべてが変わっています。
その日からは彼女にとって砂漠のほうが大切になり、宝物を探している少年のことを想像し、風にのせてキスを送ります。
砂漠は彼女にとって、少年が帰ってくるという希望を意味するようになったのでした。
【記事18に続く】
パウロ・コエーリョ著『アルケミスト 夢を旅した少年』
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