前回の記事からの続きです。
今の状況を言葉にする「ラベリング」というテクニックについて説明してきました。
外側の事実確認だけでなく、次は内側すなわち自分の心に対してラベリングしていきましょう。
今の心の状態を「貪欲」「怒り」「妄想」の3つのうち、どれなのか分類するのです。
貪欲・怒り・妄想の三原色
貪欲は、求めすぎている状態。
怒りは、不安や憂鬱なども含めた、不快を感じている状態。
妄想は、頭の中に言葉や音、映像が漂っている状態。
これらは光の三原色みたいなもので、それぞれの状態の割合によって、すべての苦悩を表現できると考えてください。
なので、貪欲・怒り・妄想をひとつひとつ消していけば、最終的に悩みや苦しみのない状態にたどり着けるのです。
消していく方法として瞑想や座禅、マインドフルネスがあります。
ラベリングは悩むことと正反対
何か心に悩み(反応)があるのなら、まずそれが妄想なのか、怒りなのか、貪欲なのかをはっきりラベリングしてください。
はっきりと自覚できると、その悩みは消えていくプロセスに入ります。
なぜならラベリングすなわち言葉で理解することは、悩む(反応する)こととは正反対の意識の使い方だからです。
練習するほどにわかってくるのは、ラベリングが「思考を増やす」のではなく、「心の状態を客観的に確認する」ということ。
だんだんと、3つの反応がどんな形で悩みを作っているのかわかるようになるはずです。
妄想にも「正しい思考」とそうでないものがある
貪欲と怒りよりもまず最初に取り上げたいのが「妄想」です。
というのも妄想が人間の苦悩を長引かせているので、妄想さえ洗い流せば悩みの99%を解決できるといえるからです。
妄想とは脳裏に浮かぶ映像、音、言葉すべてなので、仕事や勉強で頭を使うのも妄想に当たります。
ただし意味のある妄想を仏教では、目的につながる「正しい思考」と呼びます。
目的につながらないのは、たとえば以下のような妄想。
「思い出さなくてもいいことを思い出す」「先行きをネガティブに想像して不安になる」「雑念が頭に漂う」「自分を否定的に判断する」
これらの妄想は簡単にできてしまい、それゆえに心を苦しませるのです。
妄想に気づけば抜け出せる
ひとつの妄想が刺激となり、二次反応として心が別の妄想や感情を生み出すことも。
過去を思い出し、当時のつらい感情が蘇っていっそう落ち込んだり、未来に対して弱気になったりします。
何もしていないのに沈鬱な表情をしている人や、いつも不機嫌そうにしている人は、自分で作った妄想に反応しているのです。
そうならないためにも、まず「あっ今、妄想していた!」と気づいてラベリングすることを覚えましょう。
自覚できたら、実際に今やっていること(立っている。息をしている。作業している)を事実確認してください。
すると思い込みや雑念にまみれた状態から抜け出せるはずです。
何かを求めすぎる「貪欲」
何かに不満があるとき、心はほぼ確実に「貪欲」の状態になっています。
もともと妄想から貪欲が作られるのだと理解しましょう。
たとえば親に愛されなかった過去を持つ人は、その記憶が妄想となり「もっと愛情をくれ」とガツガツした性格として他人に映ったりします。
また、物欲というのは「作られた妄想を求める貪欲」といえます。
物欲は一概に否定できないものの、必要ないものを欲しいと思ったときに「妄想に反応しているだけだ」と気づくのは大切です。
「どうせ手に入れたところで、妄想が満足するだけで、現実はさほど変わらない」と思い直せるかもしれません。
要らないものを求めていないか
モノに留まらず、社会的地位や学歴、数値で測れる目標を追いかけるのも、貪欲に駆られた姿です。
自分が優れているという妄想を守りたいがために、他人を貶めたりするのもそうです。
貪欲に駆られたところで、それは妄想を求めているだけなので、満足を得ることはほとんどありません。
なくてもいいものを求めることでずっと不満が続く、心の病気のようなものです。
そう気づけば、もっと価値ある生き方を求めるようになれるのです。
【記事04に続く】
草薙龍瞬著『こころを洗う技術 思考がクリアになれば人生は思いのまま』
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