古賀史健著『文章講義』要約#07 文章構成はカメラワークを意識する

読書

20歳の自分に受けさせたい文章講義

前回の記事からの続きです。

音読によって文章の聴覚的リズムを確認でき、断定によって文章に切れ味が生まれるという話をしました。

今回からは、これまであまり触れなかった「論理展開」について掘り下げていきます。

論理展開といわれると難しく感じるかもしれませんが、要するに「文章構成」のことだと考えてください。

文章の個性や面白さを決めるのは、構成です。

文章構成に客観的な正解はない

たとえば新作映画の紹介にあたって、映画監督に取材したとします。

映画監督は10人のライター達に、それぞれのインタビュー時、だいたい同じことを言いました。

でも出来上がる原稿は、ライターによってまるで違ったものになるはずです。

なぜなら、それぞれの書き手によって、選ぶ言葉や話を進める順番など、構成が変わるからです。

ここに客観的な正解はありません。ベターはあっても、ベストはないのです。

起承転結ってどうなのか

「起承転結にとらわれないように」と、多くの専門家たちは言います。

著者の古賀氏も、最初から起承転結を意識して文章を書いたことはない、とのこと。

しかし、その存在価値は大いに評価したほうがいいのです。

たとえばある人の伝記などで、退屈な文章が続いたあと、「転機となったのは〜」で始まる一文がくるとハッとさせられるはず。

この一文で文章の流れを変え、リズムを整え、結論にもっていくことができるのです。

ちなみに起承転結型の4コマ漫画は日本独自の文化であり、日本人には起承転結の伝統が受け継がれているといえます。

なので、文章構成において起承転結をむげに否定することもないでしょう。

物語の構成なら「転」が有効

起承転結の「転」は、ストーリー仕立ての流れの文章で効果を発揮するものです。

「転」のところで読者が「えっ、どういうこと?」と引き込まれ、次の展開に注目するようになるからです。

逆に実務的な文章では、読者を戸惑わせることなく、スムーズに読んでもらうほうが大切になります。

だから文章指導において、起承転結を教わることがあまりないのです。

序論・本論・結論はカメラワークで考える

現在、小論文などで広く使われている構成は「序論・本論・結論」です。

この構成は起承転結に比べると、具体的にどう書けばいいかイメージしづらい、という欠点があります。

「序論・本論・結論」を考えるにあたって参考にできるのは、ベタなテレビドラマなどの映像表現です。

たとえば「ある男性が、今の奥さんと知り合って結婚にいたるまで」の話を、数分の映像で再現するとします。

カメラワークとしては、最初は大学のキャンパスの風景など、初めて出会う場所の遠景を映すのが適切です。

続いて、男性や女性の表情や心境など、かなり近い距離でのショットが続きます。

そして無事に告白にも成功し、最後にカメラはもう一度遠くから2人をとらえるわけです。

  1. 序論=導入(客観のカメラ)
  2. 本論=本編(主観のカメラ)
  3. 結論=結末(客観のカメラ)

以上のように、ロングショットからクローズアップまでをうまく組み合わせることで、物語は自然に進行します。

文章にメリハリをつけるために

序論で語るのは、客観的な状況説明です。

本論では、それに対する自分の意見や仮説を語ります。

そして結論で、再び客観的な視点に立って論をまとめていくのです。

以上のような大枠の構成に限らず、文章を書くときは常にカメラワークを意識しましょう。

すると、文章と文章のあるべき順番も理解しやすくなり、説得力も増してきます。

さらに、文章全体にメリハリがついて、リズムもよくなってくるのです。

記事08に続く

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