前回の記事からの続きです。
読書にあたって「目からウロコが落ちる」ような体験は、あればあるほどいいと思うかもしれません。
しかし実際のところ、そのような読書体験は全体の3割もあれば充分です。
また、自分の知らないことよりも、知っていること・好きなことのほうが書きやすいに決まっている、と考えるかもしれません。
これも実際は、知らないことを調べながら書くほうが、読者との距離感をつかみやすかったりするのです。
目からウロコ体験は3割でいい
たとえばビジネス書を読んで、最初から最後まで全部自分の知っていることだったら「金返せ」と思うかもしれません。
だからといって、内容がすべて「目からウロコ」で、意外なことだらけの本もまた受け入れてもらえません。
なぜなら、意外なこと・知らないことばかりで構成された本を読むと、どこまで信じていいのかわからなくなるからです。
「目からウロコが落ちる」要素は、全体の3割でよく、あとの7割は「すでにわかっていること」でよいし、そうあるべきなのです。
背中を後押しする要素、情報収集の要素も
僕たちは、この目からウロコが落ちる「マジか!」という体験だけを読書に求めているわけではありません。
「マジか!」のほかに「そうだよね」「なるほど」などの要素も必要です。
「そうだよね」「よしよし」といった背中を後押しする要素によって、読者は自己肯定感が高まります。
また読者は、「なるほど」「ふむふむ」と思える情報を、客観的な立場で知りたいとも考えているのです。
そして一冊の本、一本のブログのなかに、これらの要素がすべて入っている必要があります。
求めるのは驚きや感動だけではない
たとえば、全部「マジか!」で構成される文章はこんな感じになります。
- 主張:日本一おいしいラーメンは、うカップ麺だ(マジか!)
- 理由:あの化学調味料の味がたまらない(マジか!)
- 事実:ラーメンのなかでカップ麺がいちばん売れている(マジか!)
これはあくまでも悪い例のひとつです。
最初の主張は「大きなウソ」のひとつとみなすこともできます。
しかし、それに続く理由などで「だよねー」と思える要素がないと、どうも納得できないのです。
驚きや感動だけが読者の醍醐味ではありません。
「マジか!」3割、残り「そうだよね・なるほどね」などが7割と覚えておきましょう。
好きだから書きやすいわけではない
今回も含め、ここ数記事のメインテーマになっていた「読者の椅子に座る」には、元ネタがあると著者は言います。
それは、とある映画監督の「なにも知らない観客として、自分の映画を観てみたい」という言葉です。
著者はプロのライターになってから、改めてその言葉の深さを知ったとのことです。
一般的に、自分の好きなことや興味のあることのほうが文章にしやすい、と思うかもしれません。
でも、好きすぎると読者との距離感がつかめめず「わかる人にしかわからない」文章になりがちなのです。
知らないことのほうが読者が見える
逆に、今まで自分が知らなかったことを調べながら書くほうが簡単な場合があります。
なぜなら、そのほうがなにも知らない読者の気持ちがわかりやすいからです。
そこを理解できれば読者が「見える」ようになり、自分の好きな分野でもわかりやすく書けるようになります。
読者とは、文章の向こう側だけに存在するのではなく、自分が実際に会って話す人もみんな読者です。
「読者の椅子に座る」という意識は、コミュニケーションの根幹にあるべきものです。
【記事17に続く】
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