エックハルト・トール著『ニュー・アース』。
今回は2章の続きまでを要約しました。
何度も読んでいる大好きな本ですが、いざ要約しようと思うと難しい。
前回の記事はこちらです。
世界をありのままに見る
私たちが感知し、経験し、考えることができるのは現実の表層だけです。
言葉というラベルを貼り、わかったような気になっているのです。
ラベルを貼らず世界をありのままに見れば、奇跡のような畏敬の念がよみがえります。
最大の奇跡は「自己の本質」を経験できることです。
それを経験するには、自分をモノや事物から切り離す必要があります。
言葉はものごとを頭で把握できる程度に簡略化してしまいます。
私たちは思考や言葉を使う必要があるが、急いで物事にラベル貼りをしてしまうと、現実を生き生きと感じ取れなくなるのです。
幻の自己
日常的な使い方の「私」には根源的な誤りがあり、ありもしないアイデンティティを意識させます。
この「幻の自己意識」は現実に対する誤解のベースになっています。
幻は幻と認識すれば消えます。自分が「何者ではないか」を見きわめているうちに、自分が「何者か」は自然に現れてきます。
あなたが自分のことを「私」と言うときに想定しているのは、ほんとうのあなたではありません。
子どもは最初「ジョニーはおなかが空いた」というように自分のことを三人称で呼ぶが、そのうち「私、僕」という便利な言葉を覚えます。
それからオモチャなどに対し「僕のモノ」というように自分自身と混同させます。
成長するにつれ「私、僕」という言葉に性別、身体、持ち物、国籍などといった思考が引き寄せられます。
つまり「私」というのは、思考の寄せ集めでできた精神的な構造物にすぎないのです。
ほとんどの人は「絶え間のない思考の流れ」に自分を同一化してしまっています。
この「自分の思考」は自分ではないと一瞬でも「気づいた」人は、その体験を決して忘れません。
アイデンティティが「考えている心」から「気づき」に移行するという体験です。
頭のなかの声
著者トール氏の体験談によると、学生時代に電車でブツブツ独り言を言っている女性に出会ったといいます。
彼女は想像上の対話を続けながら電車を降りて歩き続けます。目的地は偶然にもトール氏と同じ大学でした。
女性が去った後、トール氏はトイレに行き「あんなふうになったらおしまいだな」と思いました。しかし実際には思っただけでなく、声に出してしまっていました。
自分も彼女と同じように、ずっと心のなかでしゃべり続けていたことに気づきました。
この瞬間、トール氏は自分の心から離れて、深い視点から自分を見ていることに気づき、トイレの鏡の前で声を上げて笑ったといいます。
この一件で彼は「気づき」に触れたと同時に「人間の知性」に対する絶対的な信頼がなくなりました。
エゴの中身と構造
エゴイスティックな心は、完全に過去によって条件づけられています。
エゴが生まれる最も基本的な精神構造の一つが「アイデンティティ」です。
基本的なレベルでのアイデンティティの対象は「モノ」です。モノとの結びつきによって自己を強化したいという、無意識の衝動があります。
アイデンティティとしてのモノ
多くの場合、人は製品を買うのではなく「アイデンティティの強化」を買います。
「何にアイデンティティを感じるか」は、その人の年齢や性別、文化などによって大きく異なるし、「エゴの中身」とも関係します。
対して「何かにアイデンティティを求めたい」という衝動は「エゴの構造」と関係しています。
いまほとんどの人は、現実に生きているのではなく、概念化された世界を生きています。
自分を生き生きとした生命体として感じられなくなると、人はモノで人生を満たそうとします。
モノを通じて自分自身を発見しようとするのは、ほんとうにモノを尊重することではありません。
例えば「自尊心が所有物と結びついていないか」というように、改めて自分とモノとの関係を見直してみるといいでしょう。
なくなった指輪
トール氏はスピリチュアルカウンセラーとして、ある女性ガン患者と関わったことがあるそうです。
彼女は「大事にしていたダイヤの指輪がなくなった。犯人はきっと家政婦の女だ」と怒っていました。
トール氏は彼女にいくつか質問をし、最後にこう聞きました。
「それがなくなったら、あなたは損なわれますか?」
彼女は最初、反射的に「もちろん損なわれる」と思ったけれど、冷静になったら何も損なわれないことに気づき、「私は在る」と感じられたのです。
トール氏は彼女に、それが「大いなる存在」の喜びであると伝えました。
ときにはモノを手放すほうが、守ったりしがみついたりするよりもはるかに力強い行いです。
「もっと多く」によって自己意識が強化され、「より少なく」によって自分が小さくなると感じるのは、ただのエゴです。
エゴは悪ではなく、ただの無意識。自分のなかにエゴを発見できたら、微笑みましょう。
(次回に続く)『ニューアース』ちょっとずつ要約#03
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