『君の名は。Another side:Earthbound』小説、読みました。
『君の名は。』映画の本編では明らかにされていない設定がいろいろ分かります。
僕はその中でも、三葉の父である宮水俊樹の物語に感動しました。彼のことを中心にこれから語っていこうと思います。
(以降、ネタバレを含みますので読むときは注意してください)
小説は4話構成
1話ごとに主人公が変わります。それぞれが独立した短編となっています。
第1話は三葉に入れ替わってる時の瀧の話。突如、女性の体になってしまった男の心情がリアルに描かれます。
第2話はテッシーの話。建設会社の息子なりに、自分の住む糸守町をよくしたいという思いが描かれています。
第3話は三葉の妹、四葉の話です。四葉もさすが宮水家の血筋だけあり、何かと不思議な体験をしています。
そして第4話が三葉の父、俊樹の話となります。
民俗学者時代に二葉と出会う
溝口俊樹は民俗学者として、日本各地の伝説などを研究していました。
取材のため、宮水神社に赴いた彼は二葉と出会い、すぐに打ち解けます。
二葉は俊樹を初めてみた瞬間に、彼と結婚するかもしれないと思ったそうです。
それを打ち明けられた俊樹もびっくりしましたが、その後二人は何度も出会い、結婚が現実的なものになっていきます。
二葉の母親である一葉は最初、結婚に反対しますが、二人の意志が固いので次第に折れていきます。
その代わり俊樹が宮水家の婿養子になることと、学者を辞めて宮水神社の神主になることを結婚の条件としました。
こうして溝口俊樹は自分の親戚一同の反対も押し切り、宮水俊樹となるわけです。
三葉、四葉の誕生、そして二葉の死
二葉にはどこか神がかった雰囲気があり、糸守町の住民からも慕われていました。
だからこそ俊樹にだけは真に心を許す面もあったとのこと。
結婚生活は順調だったようで、三葉が生まれ、8年後に四葉が生まれます。
しかしその後、二葉は病に倒れてしまいます。
最先端の医療に頼れば回復するかもしれない、と俊樹は考え、病院を移ることを提案するのですが、二葉は頑なに拒みます。
大きな流れにまかせたい、といったことを二葉は言うのです。
結局、二葉は亡くなってしまうのですが、俊樹に恐ろしい考えがよぎります。
「三葉と四葉の命を引き換えにしてでも、二葉を生き返らせたい」
慌ててその考えを俊樹は打ち消すのですが、それくらい二葉を愛してたということです。
彼の潜在意識にあるそんな思いが、三葉との関係の確執につながっているのかもしれません。
住民の意識改革のため、町長に
二葉が亡くなり、糸守町の住民一同が悲しみにくれるのですが、俊樹が驚くほどに住民たちの立ち直りが早い。
彼女の死も流れの一環だということを彼らは受け入れてしまっている。
俊樹はそんなスピリチュアルじみたことが許せませんでした。生身の人間だった二葉が、どうしてそんな神がかった感じにされてしまうのか。
「二葉が死んでしまったのは、この町全体の雰囲気のせいだ」
彼は住民の古めかしい意識を近代化させようと、政治の勉強を始めました。
地元の建設会社(テッシ―の親)などを味方につけ、糸守町長になるのです。
結局、大きな流れの一環だったと気づく
以上が回想シーンで、場面は糸守町のお祭りの日に戻ります。
そういえば別人のような三葉がやって来て、今夜彗星が落ちてくるとか言って、胸ぐらをつかまれて…の後に昔のことを思い出していたのでした。
その後、一葉と四葉が彼のもとに訪れて、三葉の言ってることは本当かもといい、そこに傷だらけだが意識はまともな三葉がまたやって来る。
そこで彼は悟るのです。
「今の自分は、町民全員に避難指示を出す権限を持っている!」
そういうことだったのかー!
彼はこれまで自分の意思で行動していたのでしょうが、無意識に大きな流れに動かされていたのだと言えます。
再び本編を観て感動
というわけで、この小説を読んだ後に、録画してある『君の名は。』を再び観ました。
何も知らないときは憎らしかった父親、俊樹が今ではすごく愛しく思えます。
選挙演説中、娘を見かけて「三葉、胸張って歩かんか!」と叫んじゃう彼も愛しい。
いや三葉には悪いけど。
『君の名は。Another side:Earthbound』第4話目を中心に書きました。
今回はほとんど触れなかったけど、他の話もかなり面白いです。本編が好きならぜひ!
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