パウロ・コエーリョ著の小説『アルケミスト 夢を旅した少年』。
前回の記事からの続きです。
同じ夢を繰り返し見たという少年は、夢を解釈できるという老女を訪ねます。
占い師の老女のところへ行く
少年は老女に招かれて部屋に入り、老女は静かに祈り始めます。
その祈りを見て、少年は人をさらうという噂のある移動民族を怖がっていた幼い頃を思い出します。
老女は少年の手を見て「これは面白い」と言ってから、
「夢は神のお告げだよ。神がわれわれの言葉を話す時には、わしは彼が何と言ったかを解釈することができるのさ。しかし、神が魂の言葉を話す時、それがわかるのはおまえだけさ。いずれにしてもお代はいただくよ」
少年は自分の夢のことを話し始めました。羊と一緒にいたところに子どもが現れ、子どもは少年の手をつかんでエジプトのピラミッドまで連れていった、という夢でした。
そして夢の子どもは少年に「あなたがここに来れば、隠された宝物を発見できるよ」と言い、宝物の正確な場所を教えようとしたときに少年はいつも目が覚めるのでした。
老女の夢の解釈
今はお代はいらないけれど、宝物を見つけたらその10分の1をおくれ、と老女は言います。
少年はいまお金を払わなくてすむんだと喜び、老女と約束しました。
老女の夢の解釈は以下の通りでした。
「おまえはエジプトのピラミッドに行かねばならない。ピラミッドのことは一度も聞いたことがないが、おまえにそれを見せたのが子どもだったのなら、それはあるということだ。そこでお前は宝物を見つけてお金持ちになるのさ」
少年はこの、解釈というよりもそのまんまの答えに苛立ちますが、お金はいらないことを思い出し冷静になります。
エジプトに行く方法などについては老女は何も言ってくれないし、少年は失望してその場を後にするのでした。
広場にて老人と出会う
少年はその後、市場で食べ物を買い、自分の持っている本を別の厚い本と交換して、広場のベンチに座りぶどう酒の味見をします。
少年が神学校にいた頃の友人たちは、一緒にらる時間が長くなるにつれて少年のことを変えたがり始めるものでした。
それが旅をする身になってからは、友人ができても彼らと長い時間を過ごさなくていいので気楽なのでした。
少年は新しく手に入れた本を読み始め、最初は登場人物の名前の発音から苦労していたけれど、次第にその本を好きになっていきます。
読書に集中しているときに老人が現れ少年に話しかけるのですが、少年は面倒がってろくに相手にしません。
頭の中では、いま読んでる物語を自分の経験みたいに商人の娘に今度話せばモテるんじゃないか、などと少年は考えていました。
そんな中でも老人はあきらめず、なんとか少年とまともな会話をしようとするので、少年はちょっといじわるのつもりで老人に本をさし出します。
世界最大のうそ
「この本は、世界中のほとんどの本に書かれていることと同じことを言っている」
老人がすでにその本を読んだことがあるという事実に、少年は軽くショックを受けます。
「人は人生のある時点で、自分に起こってくることをコントロールできなくなり、宿命によって人生を支配されてしまうということだ。それが世界最大のうそじゃよ」
老人がこのように説明したことに対し少年は、
「両親は僕に神父になってほしかったんだ。でも僕は羊飼いになると自分で決めたのさ」
「その方がずっとよい」と老人が言いました。「おまえは本当に旅をすることが好きだからな」
この不思議な老人は、少年の考えていることがわかる様子なのでした。
自称セイラムの王様
少年は老人にどこから来たのか聞いてみると、「そこら中からだよ」という答えが返ってきます。
自分の生まれ故郷について少年が説明すると、
「それならば、わしはセイラムで生まれたということだ」
少年はセイラムについて知らなかったけれど、無知だと思われるのが嫌でそれ以上は聞きませんでした。
「セイラムで、あなたは何をしていたのですか?」
「わしがセイラムで何をしていたかだって?」と老人は笑います。「そうさ、わしはセイラムの王様さ!」
しかし少年は変なこと言うじいさんだな、としか思わず、さらに何も言わない羊たちのほうがマシだなどと考えるのでした。
【記事03に続く】
パウロ・コエーリョ著『アルケミスト 夢を旅した少年』
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