前回紹介した『具体と抽象』を基本編とするならば、本書はいわば実践編と呼べる内容です。
具体化と抽象化の往復力を鍛える演習問題なんかも多く出題されていますが、丁寧な解説があるので大丈夫です。
とはいえ扱っている内容だけに、しっくりくるまでに自分は3回ほど読み返す必要がありました。
(厳密にはオーディブルの朗読版で繰り返し聴きました)
個人的に印象に残った部分をまとめていくので、参考程度にしていただければと思います。
抽象化の重要性
本書では、物事を抽象化することの重要性について終始熱く語られています。
それと同時に抽象化のデメリットや、具体か抽象のどちらか一方に偏ることへの弊害についてもしっかり説明されています。
なので、大切なのは具体と抽象を自在に往復できる能力です。
その能力を鍛えることで、自分や相手の話している内容が、どのレベルの抽象度で話しているのかを把握できるようにもなります。
抽象度は階層構造になっているとイメージしてください。
Howは具体化、Whyは抽象化
具体化および抽象化の能力を鍛える有効な方法のひとつが、物事や考えに対して質問を投げかけることです。
質問はHow型(どのように? どうやって?)とWhy型(なぜ? なんのため?)に大別できます。
これらはお互いに方向性が逆という性質を持っています。
つまり、How型の質問は具体化の方向に進み、Why型の質問は抽象化の方向に進むわけです。
言葉の定義について
相手と意思疎通がうまくいっていないとき、使っている言葉の定義があいまいな場合があります。
たとえば「行動することが何よりも大切だ」という話になったとしても、そもそも行動とは何かという共通認識が必要になってくる。
ただ動くだけでは行動と呼べない場合もあるし、物理的に動きがなくても立派な行動と呼べることもある。
こんな感じでいろいろ例を挙げていくと、「誰かに影響を与える」ことが行動と呼べるのでは、というふうに整っていったりするのです。
今回はこうして「行動」に対する認識がお互いに一致することで、会話がしっくりくるようになります。
自分で知ろうとしなければわからない
具体と抽象の往復の大切さに気づき、自分なりに理解が進むと、他の人にもわかってもらいたいと思うようになるかもしれません。
しかしながら、この概念を理解する気のない人に説明したところで、その努力はおそらく報われません。
というのも「理解したい!」と本人が自発的に思うことがすごく重要だからです。
こういうテーマに限らず、誰かから一方的に勧められた本などを、読みたいと思うことはあんまりないですよね。
自分の内面で準備が進んで、ある段階に達したとき、自然にその段階に見合った本を読むなどの行為につながるのだと思います。
終わりに
僕も前回紹介した『具体と抽象』や、今回紹介した本を何度か読むことで、少しだけ成長できた実感があります。
もともとかなり具体的に説明してもらいたいタイプで、その性格自体は変わっていないにしても、自分なりに応用を効かせられる場面が増えました。
相手が頼んできた事を言葉通りにやるだけでなく、そこから少し抽象度を上げて真の意図をくみ取るといったことが、なんとなくわかるようになってきたわけです。
劇的な変化があったわけではないけれど、今まで見えなかった世界を少しだけ垣間見れた感じがしました。
細谷功著『具体⇔抽象 トレーニング』
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