中村天風著『運命を拓く 天風瞑想録』
伝説の人、中村天風氏の本を数記事に渡って要約していきます。
前回の記事では第二章「人生を支配する法則」を要約していきました。
今回は第三章「潜在意識とその性能」、第四章「言葉と人生」について。
宇宙生命と人間の生命とがどんな関係をもっているかについて説明していきます。
一言でいうとそれは「一すじの流れの中にある」ということになります。
人間の心の内容
人間の心には「潜在意識」と「実在意識」という二つの意識の領域があります。
これらは別々のように見えて、実際は一つの精神を元としていて、働きの上で二つに分かれているものです。
実在意識は、形と感覚の世界において人間を不自由なく生活させるために働きます。
実在意識が行なった動作が数多く繰り返されると、次第にその動作は潜在意識の支配で行なわれるようになります。
慣れないことも繰り返せば慣れていき、習慣になっていくということです。
また心臓の鼓動や胃腸の消化作用などの不随意な動作も、潜在意識によって行なわれています。
潜在意識は創造を司る心だ
覚えておいてほしいのは、「潜在意識こそが肉体の建設者であり、広い意味で人生の建設者である」ということです。
もしも人間の指が金属製だったら、次第に摩耗して使えなくなるはずですが、実際は潜在意識の支配下にある細胞によって作られているため、日々修繕され補給されるのです。
ゆえに僕たちは毎日、新しく生まれ変わっているのだと言えます。
肉体の再生力は心の態度、すなわち精神状態に深く関係しています。
潜在意識の中にある再生力は、実在意識に邪魔されることによって働かなくなることがあります。
心が消極的になり、決断力もなくぐずぐずしていると、潜在意識と同化してしまい、病気の治癒なども遅くなります。
実在意識の態度が潜在意識に反映される
このような話を理解できる、できないは二の次にして、心を打ち込んで聴けば、潜在意識がそれを受け入れ、必要なときに実在意識によい合図を与えてくれます。
心を打ち込むという実在意識の態度が潜在意識に反映され、肉体にも精神にも大きな影響を与えるのです。
潜在意識は実在意識を通じて宇宙霊とつながっているので、すべてのものを産み出す創造力を有しているといえます。
この意識を整理することによって、宇宙の真理を知ることができます。
すべては「心のもち方」
実在意識の態度が潜在意識に同化して作用する。
この事実があるからこそ、西洋でも東洋でも、哲学も宗教も、すべてが「心のもち方」「心がけ」というものを大切にしているのです。
僕たちは生まれながらにして、宇宙霊から偉大な力を分け与えられています。
この力をしっかりと発動させるために、実在意識をコントロールする訓練をしましょう。
言葉は人生に大きな影響を与える
皆さんが日常便利に使っている「言葉」ですが、言葉は自分の人生に大きな影響を与えます。
天風氏はインドで修行していた頃、師匠によく「How do you do today?」(今日はどうだい?)と聞かれたものの、いつも「I’m not puite well.」と答えていたそうです。
すると以下のようなことを言われました。
「そういうことをいってお前は気持ちが良いか? お前は自分の使う言葉によって意識が受ける影響をわかっていない」
「言葉の良し悪しによって、お前の生きる力が良くもなり悪くもなるんだ」
「痛いときに痛いと言うのは良いが、それから後に、だから不愉快だなどといった自分の気持ちを付け加えてはならない」
「俺のもとで修行している以上、お前はもう普通の人間ではない。お前は真理を探求しているんだから、その言葉を汚しちゃだめだ」
自分自身が尊敬を感じるような言葉を使おう
言葉に注意せず、さかんにおしゃべりしていると、自分自身だけでなくそれを聞いている人の生命にまで悪影響を与えます。
悪い言葉は生きる上で肝心の神経系統の働きを悪くします。
人間の精神生命の中には暗示の感受習性というものがあるので、自分の口に出した言葉が潜在意識に影響し、その通りの状態が働き出すのです。
何気なく出てくる言葉というものも、観念がその言葉を作っています。
人生は言葉で哲学化され、科学化されます。
このことを自覚し、言葉という尊い武器を巧みに運用し応用して、勇敢に人生の難路を進んでいきましょう。
常に言葉に慎重になり、いかなるときも積極的以外の言葉を使わないよう心がけましょう。
そうすれば暗示を法則を応用したことになり、宇宙霊に合図したことにもなり、期せずして健康も運命も完全になります。
撃たれた二人の伝令
日露戦争時、天風氏が軍事探偵だったころの話ですが、司令部に伝令がやってきた時、ちょうど銃弾が伝令の太ももに当たりました。
彼は痛い痛いと叫び、そのまま運ばれていき、二人目の伝令がきたとき、今度はその伝令の胸に銃弾が当たり、肺を撃ちぬかれました。
あとで天風氏が野戦病院に行き看護兵に尋ねたところ、伝令の一人は死んでしまったということです。
天風氏は肺を撃ちぬかれた二人目の伝令のことだろうと思いましたが、実際に死んだのは一人目の、太ももを撃たれた伝令でした。
生きている二人目の伝令のところへ行ったら、息も絶え絶えだったもの「大丈夫です」と答えたので、これは助かるなと天風氏は思ったそうです。
使う言葉はそれくらい影響するのだという話です。
消極的言葉をわざわざ言わない
頭が痛いときに「痛くない」と言ったら嘘になるので「痛い」と言えばいいです。
ただしその後に「どうにも死にそうだ」とか「もう駄目だ」というのがいけないのです。
「暑いなあ」と言ったなら、その後に「よけい元気が出るなあ」と積極的な言葉をつけましょう。
あなたの一言一言が自分自身のみならず、すべての人々に影響を与えます。
積極的な言葉を使う習慣ができてしまえば、その後はたいした努力の必要もなくなります。
どうしても消極的な言葉を使いたくなったら、一人のときに使えば、自分が損害を受けるだけで他人に迷惑はかからないでしょう。
もっと美しい平和な世界に
お互いに勇気づける言葉、喜びを与える言葉などを使う人が多くなれば、この世は期せずしてもっと美しい平和な世界になるでしょう。
設備や制度の改革で改善されるのは相対的なもので、絶対的なものは人々の心でのみ創られます。
すべてを創り変える宇宙霊の力を受け入れた人々が集まれば、国家社会は如実に改善され、平和になるでしょう。
言葉は思考が結集したもの
万物の根源である「ただ一つの気」が、人間の心に入って「観念」となり、それが「思考」となります。
その思考は一方では行動として現れ、もう一方では言葉として現れます。
言葉というものは思考が結集し、それを表現するために与えられた恩恵です。
口から出す言葉だけでなく、文字を書く場合もそうです。
言葉には人生を善くも悪くもする創造の力が存在しているのです。
「こうするからできないのだ」ではなく「こうすればできるよ」というような言い方で終わるようにしましょう。
もしも消極的な言葉で終わってしまったら、直後に「とは言ったけれど」と打ち消してしまえば大丈夫です。
宇宙霊は鋭敏な耳を持っている
僕たちが一人でいるときにも、背後には宇宙霊という限りなき叡知を持ったものが控えています。
宇宙霊は鋭敏な耳で僕たちの声を聞いています。
人を傷つけるような言葉、憎しみ、妬みといった言葉を遠慮もなく言う人は、悪魔の加勢をしているようなものです。
喜びを与える言葉、朗らかに感じるような言葉を使う人が増えるほど、この世の中は理想化されていきます。
自分の人生を建設しようとする意気込みは、世界中の人間の人生を建設することになるのです。
(次の記事に続く)
中村天風著『運命を拓く 天風瞑想録』
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